近年の研究により、「第二の脳」と呼ばれ、がんから認知症まで全身の健康と直結することが次々と明らかになりつつある腸。活性化させ、ケアするための「あの手この手の腸活」が一大ブームとなっているが、光あれば影あり。【前後編の後編。前編から読む】
口から入る食品や飲み物に加え、マッサージや便秘解消法もまた、間違った知識がかえって腸に負担をかける。腸セラピストの真野わかさんが特に注意すべきと指摘するのは、「痛みを伴う腸もみ」だ。
「マッサージは痛いほど効果があると思っている人も多いですが、腸には厳禁。強く刺激するのは逆効果です。腸は痛みを感じると過剰に緊張して、本来の動きができません。
自分でマッサージするときは、力をかけすぎないことを意識して指を立てて押し込んだり、息を止めるほど力を入れたりするのはやめましょう。整体院やマッサージ店で施術を受けるときも、事前にマッサージの強さを問い合わせるなど、腸を労ることを第一に考えてほしい」
便秘解消も腸内環境を良好に保つための近道だが、人工的な方法は “最後の手段”と心得るべし。
「なかでも腸内を温水で洗浄し、便やガスを一気に排出する『腸洗浄』は、頻繁に行えば腸の冷えや腸内細菌の減少につながります。便秘薬も、添付の説明文書に記された用法用量以上の服用は避けてほしい。腸が刺激に慣れて動きが鈍くなるリスクを伴います」(真野さん)
つまり、便秘は食事や運動など、なるべく日常生活の中で改善するのが最善だということ。
「ただし、運動のやりすぎは禁物です。適度な運動は腸を刺激して動きを活発にしますが、息が上がるような激しい運動を長時間すれば体が興奮して、交感神経が優位になる。その状態が続くと、腸が緊張状態に陥り、動きが鈍ります」(真野さん)
腸を温める「ホットバナナ」
食べ物から運動まで、もし“間違った腸活”に心当たりがあれば今日から改めてほしい。代わりに必要なのは腸をケアし、活性化させるための本当に正しい方法だ。専門家たちがその手段として真っ先に挙げたのは食べ物の種類や組み合わせに注意すること。これまで7000人以上の腸内環境を調べてきた医薬基盤・健康・栄養研究所ヘルス・メディカル連携研究センター長の國澤純さんが解説する。
「善玉酵素にしっかりと働いてもらうには、食物繊維や発酵食品に加え、ビタミンやミネラルが欠かせません。特に豚肉やうなぎが含有するビタミンB1と海藻や乳製品に多く含まれるミネラルは酵素の働きに重要です。
また、人間の腸内には約1000種類の腸内細菌がすみつき、それぞれが助け合って働いています。いくら体にいい成分であっても特定の食材ばかり食べていれば、多種多様な腸内細菌が育ちません。偏りなく、さまざまな食品を摂ってほしい」