カラオケで歌いたい昭和の名曲たち。その魅力はどこにあるのか。ここでは、谷村新司『昴』、加山雄三『サライ』、村田英雄『王将』の3曲について紹介する。
思わず居住まいを正す特別な力のある歌
読者から「若い頃にはじめて覚えた曲。今でもカラオケに行けば必ず歌います」(53歳・会社員)、「1人ワンフレーズずつ歌って回す『スバル回し』でカラオケの最後を締めていました」(66歳・会社員)といった声が寄せられたのは谷村新司の『昴』だ。
編曲家でミュージシャンの佐孝康夫(69)が語る。
「初めて聴いた時、私は『特別な力を持った曲だな』と思いました。谷村さんは男女の愛の歌が多いですが、これは違う。己の生き方や内面を吐露するような、深く味わいのある歌です。私は約12年、谷村さんのツアーのバックバンドや編曲に携わり、『昴』は2000回ほど演奏しています。
不思議だったのは、あの印象的なホルンのイントロが始まると、観客のみなさんが居住まいを正すんです。ディナーショーでも、海外のツアーでもそう。聴く人の心を掴む、不思議な力を持つ歌なんだと思いました」
名曲誕生の瞬間に立ち会った
「スナックでちょっと歌いたいな、と思う時にチョイスしています。毎回、加山さんや谷村さんになり切って、気持ちよく歌っています」(46歳・公務員)と愛されるのは、加山雄三の『サライ』だ。
アナウンサーの生島ヒロシ氏(71歳)が、誕生時の秘話について、語ってくれた。
「第15回『24時間テレビ』放送中に加山さんと谷村さんが制作するという企画の中で誕生した楽曲です。そんなこと可能なのかな、と半信半疑で実況していました。最初はお2人とも戸惑っていた様子でしたが、最後の方は状況を楽しんでいるように見えましたね。やっぱりヒットメーカーというのは違うんだな、と思いました。
いざ出来上がってみると、あまりにいい曲で感動して涙が出ました。こんな現場に立ち会えたなんて、アナウンサー冥利に尽きます。今でも、あの時のお2人がやり取りをしている風景を思い浮かべながら、私も歌っています」