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村田兆治氏の訃報に元南海・門田博光氏が述懐「あのフォークはバットに当たらなかった」

ロッテのエースとして現役時代は鮮烈な印象を残した村田氏(時事通信フォト)

ロッテのエースとして現役時代は鮮烈な印象を残した村田氏(時事通信フォト)

“マサカリ投法”で知られ、プロ通算215勝をあげた村田兆治氏が11月11日、東京・世田谷の自宅火災で亡くなった。72歳だった。1967年にドラフト1位指名を受けて東京オリオンズ(現・ロッテ)に入団した村田氏は、フォークボールを武器に三振の山を築き、1970~1980年代にかけてパ・リーグを代表する投手として一時代を築いた。その突然の訃報は衝撃をもって受け止められている。

 曲がったことが嫌いな性格で「昭和生まれの明治男」とも呼ばれた村田氏だが、同時代にグラウンドで相対した選手たちにも鮮烈な印象を残している。

 1969年のドラフト2位で南海に入団し、1992年に44歳で引退するまでの23年間、パ・リーグでプレーし続けた門田博光氏(74)もそのひとりだ。40代になって本塁打王・打点王を獲得して“不惑の大砲”の異名を取った門田氏だが、ライバル球団のエースだった村田氏を打ち崩すのがいかに困難だったかをこう振り返る。

「兆治は8回、9回になってもコントロールが乱れることがなく、球威も落ちなかった。“先発完投”の男で、9回を投げきるのが自分の仕事という考えだった。先発マウンドに上がったが最後、途中降板をしたという記憶がないですね。

 マサカリ投法が完成した頃だったと思いますが、僕が兆治の完璧なスライダーをホームランにしたことがあった。それ以来、スライダーは投げてこなくなってフォークとストレートのコンビネーションになった。簡単には打てなくなりましたね。フォークという強力な武器ができると、バッターは常に警戒する。そんな恐怖感を与えるピッチャーになった。フォークを完璧にとらえたのは1回くらいしかなかったね。それもゲームの終盤にボールがヘナヘナとなる頃の話で、それ以外はバットに当たらなかった」

 当時はオールスターゲームで一緒のチームになっても「今のようにベタベタした友達関係にはならなかった」と門田氏は振り返る。記憶に残るのは、大阪球場で対戦した時に、村田氏から逆転3ランを放った時のことだという。

「ロッテは稲尾(和久)監督の時代でしたが、そのゲームの前に仙台での試合で兆治にコテンパンにやられた。その時に、兆治とキャッチャーに聞えるように“この次の大阪ではストレートだけやで”と何度も叫んだんです。大阪球場での試合でも“ストレートだけやで”と相手に聞こえるように言った。すると兆治は正直にストレート勝負をしてきて、逆転3ランとなった。バンザイしながら“ありがとう”とダイヤモンドを回ったら、兆治が悔しそうな顔をしていました。そんなストレートの真っ向勝負ができたのは、自分の力に自信があったからでしょうね」

 正面から打者に挑んで数々の名場面を生み出した村田氏の勇姿は、ファンの記憶からも消えることはないだろう。

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