【書評】『改訂新版 統一教会とは何か』/有田芳生・著/大月書店/1650円
【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)
統一教会については、30年前、桜田淳子がソウルでの「国際合同結婚式」に参加したことで、その異常さを知ることになる。教祖の文鮮明が決めた見ず知らずの相手と、式場ではじめて顔を合わせ、互いの意思の確認もなく結婚する。奴隷のような扱いに、ただただ驚愕したものだった。
この儀式のハイライトは、「文鮮明の血」を受け継ぐために「文鮮明の精液が入っている」ワイン色の「聖酒」を飲むことであり、「第1回の結婚式」に至っては「3人の新婦と文鮮明はセックスを行なった」という。そんな淫教ぶりを、当時、著者の有田さんは熱心に報じていた。
すでに社会問題化していた「霊感商法」についても、そのインチキぶりを痛烈に批判。悩みを抱える人を教団は、「先祖から来る因縁を清算することが必要」と説き、「信じて滅びよ」と洗脳し、高額の壷や印鑑などを「年に40億円」売りつけていたという。そんな「詐欺商法」を休むことなく営々と続けていたことが、本書に収録された元信者たちの手記で生々しく語られている。
統一教会の原理の秘密は、戦争中、韓国を「植民地統治」した日本には、何をやってもいいという教祖の考えであるという。
まさにカルトゆえの教義だ。合同結婚式にしても、その目的のひとつは、結婚できない韓国の「農村に暮らす男性」に「統一教に入れば、教養のある日本人女性と結婚できる」と宣伝し、韓国での勢力拡大にあった。しかも花嫁となる日本人女性たちは、韓国に行く前に「祝福献金」をひとり200万円から240万円用意させられ、それを寄付金として持って行く。税務当局に把握されない一種の運び屋としても使われていたわけである。
与野党の議員たちはそんな教団の実態を知りながら、この30年間目をつぶり、選挙の手足として信者を使ってきた。教団との関係を深めるなか、逆に取り込まれていく過程は、日本の政治が機能不全に陥る姿そのものでもある。
※週刊ポスト2022年12月2日号