精神科医の和田秀樹氏が書いた『80歳の壁』がベストセラーになっているが、健康寿命を延ばすためには何を心がければ良いか──それを知る“生き証人”が80歳を越えた今も現役で活躍する医師たちだ。東京キャンサークリニック理事長の阿部博幸氏(84)に、健康法を聞いた。
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84歳になっても変わらず患者さんを診ることができるのは、医者冥利に尽きます。体力的にも70代と80代であまり変わらず、「80の壁」を感じることはありませんでした。
現在も都内で週5~6回勤務しており、朝5時起床、夜10時就寝の生活を休日もペースを崩さずに続けています。毎朝7時には出勤して外来の患者さんを診ており、海外の患者さんはオンライン診察することもあります。
健康維持のために気をつけているのは、まず食事です。1日3食はもちろん、食事内容にも気を使います。
高齢者の大敵はがんですが、私はそうならないようにタンパク質を意識して摂っています。多くのがん患者さんを診ると、栄養障害のある方が少なくありません。特にタンパク質が欠如している人が多く、食事療法として摂取を勧めることがよくあります。
私自身も、タンパク質摂取を意識して、即効性のあるお肉を、ステーキなどでよく食べます。サーロインよりも脂身の少ないフィレを好みます。
それから、健康効果が高いとされる納豆やオクラなどのねばねばした食材、昆布などの海藻類を食べるようにしています。和食、洋食、中華と何でも選り好みせずに食べることも、健康に繋がっていると感じています。
そのほかに続けているのは、健康バロメーターのチェック。誰にでもできる体重、血圧、脈拍の測定を、10年以上、毎日続けています。
中でも脈拍は、1分間に60回くらいを保つようにします。ヒトの生涯の脈拍数は20億回とされており、少なく保つことが長生きに繋がると考えているからです。
脈拍を少なく保つには、副交感神経を優位にする必要があります。私は血圧の薬を飲んでいますが、副交感神経を優位にするタイプのβ(ベータ)遮断薬などを選ぶことで、血圧を下げつつ、脈拍数を抑えるようにしています。
加えて、脈拍が上がらないような生活を心がけています。一番大事なのは、怒らないことです。そのために私の場合は美しいものを見て心を落ち着かせたりします。装飾品や美術品、画集を見ることを趣味にしています。