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体、心、家族、職場、地域社会が健全な状態「ウェルビーイング」とは何か?

(写真/GettyImages)

いま注目されている「ウェルビーイング」とは?(写真/GettyImages)

 ささやかなことに幸せや満足を見出し、ポジティブな気持ちが持続する「ウェルビーイング」という状態。昨今、この「ウェルビーイング」が世界中で注目されているという。「ウェルビーイング」について研究を行っている前野マドカさんに聞いた。

「多くの人は食や睡眠など、体の健康には気をつけますが、心の健康について意識しているか、と聞かれたらいかがでしょうか。私たちが考えるウェルビーイングとは、体だけでなく心も健やか、そして家族や職場、地域社会など、人々を取り巻く環境も健全な状態にあることです」(前野さん・以下同)

 人は環境に影響される生き物であり、“幸福はうつる”との研究もあるという。

「重要なのは、『他人は変えられない』ということ。だからこそ、自分を常に安定した状態にしておけば、人間関係のストレスや災害、不確かな情報に直面したとき、いっとき動揺はしても、基本はぶれず、自分の軸をしっかり持って前に進めます。

 問題を人のせいにしてもストレスはなくなりません。物事をつまらなくするのもワクワクさせるのも自分次第。自分が幸せでいれば、必ずまわりにも好影響を与えます。

『いつも運を引き寄せるよね』と言われる人がいますが、その人の行動をよく見れば、単に運がいいだけではない、ポジティブな魅力があるはずです」

 幸福度を高めるには、「4つの因子(引き寄せる要因)」が重要だという。

「『やってみよう』因子とは、自己実現や成長意欲のこと。『ありがとう』因子は、感謝の気持ちや人とのつながりを意味します。『なんとかなる』因子は、前向きで楽観的であること。そして『ありのままに』因子とは、他人と比べず、自分らしさを受け入れていることです。

 4つは連動していて、たとえば、人とのつながりを大切にし、いつでも気持ちよく挨拶ができる人は、多少の困難なら乗り越えられると楽観的になれる。その長所が力となり、新しいことに挑戦してみよう、と正のスパイラルで行動できます」

幸福度を高める4因子

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幸福度を高める4因子

幸福度を高める4因子

幸福度を高める4因子

 これが負のスパイラルになると……。

「やらされ感があるために人を信用できず、感謝の気持ちも持てない。長所も個性もない私が新しいことに挑戦するなんて絶対無理と、完全に負の連鎖に陥ってしまいます」

 前野さんが、かつて8年間PTAの役員を務めたとき、最初のうちは「夫から『PTAはお金にもならない』と嫌みを言われた」など、やらされ感満載の人も多かったという。そのとき、夫で同研究の推進者である前野隆司さんから、4つの因子の可能性を聞いた。

「PTAの集まりで実践したところ、ママたちの意識が前向きに変わり、とてもいい関係性が築けました。その経験から、4つの因子を軸としたウェルビーイングの重要性を、年齢を問わず、広くすすめています」

 とはいえ、いきなりポジティブなスパイラルに切り替えるのは難しいという人もいる。

「1つでもできそうな因子に注力してください。人とのつながりがなくても、“やってみよう因子ならできそう”と思ったら、趣味や習い事など、新しい何かに挑戦してみてください。そのうち、必ずほかの因子も上がります。意識しながら日々過ごすことで、知らないうちに幸せが育まれていきます。

 コーヒーの香りに幸せを感じる人もいれば、お料理をしているときが幸せだという人もいる。幸せは、他人ではなく自分が決めることです」

 誰にも褒めてもらえないとき、寝る前に「私、今日も一日よく頑張った」と自分で自分を褒めてあげるだけで、自己肯定感が上がるという。また、家族や友人に「私のいいところってどこだと思う?」と聞いてみるのもいいそうだ。

「介護などで余裕がないというかたも、10分でもいいので、自分をいたわる時間を作ってください。丁寧に入れたハーブティーを飲みながら、あるいはスキンケアをしながら、『私なりによくやっている』と声をかけるだけで、気分は変わります」

 負のスパイラルに引き込まれないよう、少しずつでも歩みを止めないことが大切だ。

【プロフィール】
ウェルビーイング研究者・前野マドカさん/女性のためのウェルビーイングについてのサービスを提供するEVOL代表取締役、慶應義塾大学大学院SDM研究科付属SDM研究所研究員。共著に『ウェルビーイング』(日経文庫)など。

取材・文/佐藤有栄 イラスト/オオノマサフミ

※女性セブン2022年12月8日号

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