大相撲九州場所13日目は、カド番で5勝7敗という崖っぷち状態にあった大関・正代が、玉鷲に敗れて8敗目を喫した。負け越しが決定したことで、来場所は関脇へと陥落することが決まった。それにより来場所は1横綱1大関となる異例の事態で、先行きを懸念する関係者は少なくない。
もはや“荒れる場所”が日常の風景となった。大相撲九州場所は4日目で全勝力士が消え、貴景勝、正代の両大関は序盤から黒星を重ねた。先場所陥落して「関脇で10勝」での大関復帰を目指した御嶽海も、10日目でその望みが消えた。
横綱・照ノ富士はそもそも全休で、「こうなると、いつ『横綱・大関がゼロになる日』が来てもおかしくない」(協会関係者)との声が出ている。
「大関在位13場所で5度目のカド番だった正代は初日から土がつき常に黒星先行で13日目に負け越しが決まったし、残る大関の貴景勝は押し相撲力士。四つ相撲が取れなくて安定性を欠くうえ、どうしてもケガが多い。一度はケガによる途中休場と全休で陥落も経験した。横綱の照ノ富士は両ヒザの内視鏡手術を受け、四股が踏めない状態。初場所にも間に合わないとされるし、休場が続けばそのまま引退の可能性さえある」(相撲担当記者)
大相撲は横綱・大関が東西の各2人、計4人は揃うのが本来の姿。それが3人になることはあっても、1場所15日制導入以降、横綱・大関がゼロになったことはない。
「直近では2020年3月場所で横綱2人(白鵬、鶴竜)、大関1人(貴景勝)となったが、同場所で11勝(3場所32勝)の朝乃山が大関に昇進して2横綱2大関に戻った。1981年9月場所は千代の富士の横綱昇進で大関がゼロ、横綱が3人(北の湖、二代目若乃花、千代の富士)だったが、やはり同場所で12勝(3場所31勝)の琴風が大関に昇進した。昇進の目安は3場所33勝だが、協会はなんとか横綱と大関を揃えようと苦心してきた」(同前)
ところが、「今場所12勝(3場所31勝)なら大関昇進も」の声があった関脇・若隆景は序盤から黒星が続いてしまった。
この前代未聞の事態は、2010年の野球賭博事件で八百長問題が発覚し、“ガチンコ全盛時代”になったことと無縁ではないだろう。ベテラン記者の話。
「かつては“大関互助会”という言葉もあったくらいで、ケガ以外で大関が負け越すことも稀だった。カド番で相撲を取って大関を陥落した経験を持つのは大受、魁傑、三重ノ海とガチンコ力士ばかり。“番狂わせ”の象徴である平幕優勝も数年に1回のペースだったが、令和になって毎年出ている。土俵を動き回る小兵が増えたこともあるし、ガチンコは勝負で何が起きるかわからない。番付上位の力士が下位より安定して強いという常識が通用しなくなった」
ガチンコ相撲は双方が力を抜かないから、激しい攻防が土俵際までもつれてケガも増えるわけだ。
ガチンコが浸透した結果、横綱も大関もいない本場所が現実のものになるのだろうか。
※週刊ポスト2022年12月9日号