『カメラを止めるな!』の大ヒットは、新宿のK’sシネマと池袋シネマ・ロサでの二館のみの上映から始まった。今回は公開当時の様子を、池袋シネマ・ロサ支配人の矢川亮氏に、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が聞いた。
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矢川:K’sさんが「時間帯を分けて一緒に上映しましょう」と言ってくださったんです。普通だったら「いや、うちのネタだからさ」と言われてもおかしくないんです。そこを快く受け入れてくださった。
K’Sさんは日中の上映で、池袋シネマ・ロサはレイトでやることになりました。
――最初から当たる予感はありましたか?
矢川:二週間か三週間ぐらいだったら、そこそこ成立するんじゃないかなというぐらいの感覚だったと思います。私も観て、「すごいな」とは思いましたけど、やっぱりゾンビ映画ですから客層が限られるのかなと。
K’sさんは最初から毎回満席なんですよ。最初、K’sさんが昼間三回やって、もう満席、満席、満席。うちは初日は百人ぐらいで、二、三日目は五十人ほど。それでも、「昼間あれだけ入ったあとに夜になってもこれだけ来てくれるのはすごいね」っていう感じした。
K’sさんの満席が土日を過ぎて、月曜日も火曜日も水曜日も、丸々一週間以上、全回満席。それがだんだん、やっぱり話題になって、「いつ行っても新宿では見られないけど、池袋はゆったりしてるみたい」ということで、徐々に増えて百人を超えるように。
最初に満席になったのはサービスデーの日、七月一日ですね。K’sさんは八十四席で、うちは百七十七席あるので、これぐらいドーンと来る作品だと反響も大きいんです。
満席が出ると「うわあ、池袋シネマ・ロサも人が入りだしてる。とにかく早く見に行かなきゃ」っていう機運が出てきたという感じです。
二館で上映していた時期が七月半ばまでいくので、およそ一か月ぐらいは、作品を観たいと思っても世界でK’sさんと当館だけという状態でした。K’sさんは相変わらずずっと満席で、うちもだんだん百人超え、百三十人超え、満席と、本当に加速度的に増えていきましたね。