閣僚の辞任ドミノが止まらなくなってきた。山際大志郎・前経済再生相、葉梨康弘・前法相に続いて寺田稔・前総務相とわずかひと月で3人の大臣が辞任し、後任の松本剛明・総務相に政治資金問題が発覚、秋葉賢也・復興相と岸田文雄・首相自身にまで「政治とカネ」の疑惑が浮上し、政権は追い込まれている。
「第1次安倍政権の末期に酷似している」。そう指摘するのは政治ジャーナリストの野上忠興氏だ。
「安倍政権も岸田政権同様、政権発足当初は『プリンス登場』ともてはやされて支持率が高かったが、政治資金問題や失言で閣僚の辞任が相次ぎ、後任の大臣にも不祥事が発覚して4人の大臣が交代、支持率が急降下していった。現在の状況はそっくりだ。しかも、閣僚辞任のペースが当時より格段に速い。一気に追いつめられている」(同前)
官邸も機能不全に陥っている。
物価高騰対策の補正予算案をめぐっては、岸田首相は当初25兆円規模を想定していたが、萩生田光一・自民党政調会長の一喝で29兆円へと4兆円も上積みさせられ、山際氏の辞任問題では、首相は「決断が遅すぎる」と批判されて国会で異例の謝罪までさせられた。
「官邸が全く党を抑えられなくなった。政調会長は首相の言うことを聞かないし、国対委員長も首相を守ろうとしない」(官邸の中堅官僚)
こうした現象も第1次安倍政権の“官邸崩壊”を思い出させる。
岸田首相は「4人目の大臣辞任」が出れば政権の致命傷になると、12月にも不祥事を抱える大臣を一斉に入れ替える内閣再改造を検討しているが、8月の内閣改造から4か月あまりで組閣をやり直せば人事の失敗を自ら認めることになる。任命責任が一層厳しく問われることは間違いない。
「第1次安倍政権は内閣改造から1か月後に退陣した。岸田首相も再改造に踏み切れば後がない。かといって、首相にはもはや一か八かの解散・総選挙を打つ力も残っていないでしょう」(野上氏)
自民党内では「岸田内閣は年内いっぱいか、来年1月まで」(二階派幹部)との見方が広がっている。
※週刊ポスト2022年12月9日号