今から11年前、前代未聞のプレーヤーが誕生したのを覚えているか。2011年のドラフト会議の超目玉は当時東海大の菅野智之(巨人)。だが、この年の主役はもうひとりいた。それが、早稲田大学ソフトボール部出身の大嶋匠(32)だ。
「ドラフト指名7巡目に入ったときに、名前が呼ばれたのは驚きました。非公式に日本ハムの入団テストを受けてはいたんですけど、指名されるかは懐疑的でしたから」
入団時から春季キャンプまで注目されたが、シーズンに入った途端、大嶋フィーバーは消えた。それからは、ほぼ二軍暮らしの現役生活を7年間続けた。だが「第2の人生」で倍率31倍の難関をくぐり抜け、“安定した職”を得た。
「一軍でヒットも打てたし、キャッチャーとして守備機会もありました。やりきりました。現在は高崎市役所の納税課で地方公務員として勤務しております」
彼はいま、堅実な人生を送っている。
(文中敬称略)
【プロフィール】
大嶋匠(おおしま・たくみ)/1990年生まれ、群馬県前橋市出身。2011年早稲田大学ソフトボール部を経て、日本ハムにドラフト7位で入団。2018年戦力外通告。引退後は公務員試験を受験し、現在は群馬県高崎市役所に勤務。
【取材・文】
松永多佳倫(まつなが・たかりん)/ノンフィクション作家。1968年、岐阜県生まれ。琉球大卒業後、出版社勤務を経て執筆活動開始。『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)など著書多数。ビジネス書籍『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』がKADOKAWAより発売中。
写真/木村圭司
※週刊ポスト2022年12月9日号