“聞こえ”に悩む人が現在、日本には1400万人ほど存在し(※出典:世界保健機関、一般社団法人日本補聴器工業)、65才以上の3人に1人といわれている。耳が遠くなると人づきあいが億劫になるし、駅など公共の場所で耳からの情報を得にくくなる。そのため認知症との相関性も指摘されている。
高齢者の聞こえづらさが顕著に表れるのが、テレビ視聴時だ。「音が出ているのはわかるけれど言葉が聞き取れない」という人が多く、テレビの音量を爆上げしてしまう事態に陥ることも少なくない。そんな「テレビの音声が聞き取れない」問題の解決に向けて立ち上がったのが、2013年に設立されたスピーカーメーカー「サウンドファン」だ。
創業メンバーは、59才の創業者と大手音響メーカー「ケンウッド」出身の69才と70才の技術者(年齢はいずれも当時)。そんなシニアベンチャーならではの発想で生まれたのが『ミライスピーカー』だ。
「アイディアのもとは蓄音機です。蓄音機から出る音は高齢者でもよく聞こえると知り、スピーカー内部にラッパ状のカーブを取り入れたのです」(同社取締役・金子一貴さん、以下同)
それが世界初の特許技術「曲面サウンド」(※国内特許7件取得済、基本特許8か国取得済)だ。どのようにして声が届くのだろうか。
「一般的なスピーカーは、音を伝える振動板がコーン形をしていますが、本製品は弧を描くように湾曲させています。“曲面サウンド”は高音域の音を広範囲に伝えられるという特性があるため、離れた場所でも聞き取りやすい。聴力の落ちた高齢者でもクリアな音声を聞けるのです。
さらに、距離による減衰率が少ないという利点もあります。一般に発生源が遠くなるほど音は聞こえづらくなるものですが、曲面サウンドはその減衰率が小さい。つまり、効率的に音を届けられ、テレビから離れた場所でも音量をあまり上げないですむのです」
加齢性難聴は高音域が聞こえにくくなることから始まるが、『ミライスピーカー・ホーム』使用者の約9割が聞こえの改善を実感しているという。テレビからは音楽や効果音も流れているが、それらも聞き取りやすくなるのだろうか。
「言葉がくっきりと輪郭を保ったまま耳に届きます。声の聞こえに特化したスピーカーと認識いただけたらと思います」
“百聞は一聞に如かず”──ぜひとも試してみたい逸品だ。
◆商品DATA
『ミライスピーカー・ホーム』2万9700円。カラーはブラック。サイズは幅86×高さ143×奥行212mm(上部ツマミ突起部含む)。重量約690g(電源アダプター約120g別)。コンパクトでインテリアに調和するデザインだ。
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2022年12月8日号