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【舛添要一氏解説】軍事侵攻を正当化する「プーチンの論理」は、旧ソ連の独裁者スターリンに酷似している

(Getty Images)

ウクライナ4州のロシアへの併合を一方的に宣言した(Getty Images)

 2022年2月に侵攻を開始してから約7か月後、ロシアのプーチン大統領はウクライナ4州の一方的な併合を宣言した。その後、南部へルソン州の州都を奪還するなどウクライナ側の反撃も激しさを増しており、11月末現在、戦いの終わりは見えていない。そもそも、なぜプーチンはウクライナ侵攻を始めたのか。

 20世紀の独裁について解説するシリーズ第3作『スターリンの正体 ヒトラーより残虐な男』を上梓した国際政治学者・舛添要一氏は、プーチンの「論理」はソ連の独裁者・スターリンのそれと酷似していると指摘する。

 * * *
 プーチン大統領は、スターリンは祖国をファシズムから守った偉大な政治家だとして、スターリン批判を禁止しています。

「人類史上一番偉い人は誰か」を問うた2021年5月のロシア人に対する世論調査では、1位がスターリンで39%、2位がレーニンで30%、3位がプーシキンで23%、4位がピョートル大帝で19%、5位がプーチンで15%です。

 スターリンは、1939年8月23日に独ソ不可侵条約を締結し、ヒトラーと組んでポーランドを分割領有したり、バルト三国などを支配下に置いたりしますが、これは第一次世界大戦、ロシア革命とそれに伴う内戦の混乱の中で奪われたロシア帝国の領土を回復する試みでした。ロシアの歴史家フレヴニュークが指摘するように、スターリンにとってこれはまさに「歴史的不正義を正すこと」だったのです。

(Gettty Images)

スターリンの領土拡張の論理「歴史的不正義を正す」をプーチンはなぞる(Gettty Images)

 プーチンは、2022年2月24日、ウクライナに侵攻します。プーチンによれば、それは、ベルリンの壁崩壊、ソ連邦の解体という混乱の30年間に失われた領土と支配地域を回復する作業の一環なのです。

 1989年のベルリンの壁崩壊で東西冷戦は終わりました。アメリカが盟主を務める西側が勝利し、ロシアが率いる東側が敗けたのです。その2年後の1991年12月までにソ連邦は解体し、15あった共和国はそれぞれ単独の国家として独立していきました。

 冷戦の敗者であるロシアにおいて、2000年3月の大統領選挙で当選し、大統領に就任したのがプーチンです。アメリカと勢力を二分したソ連邦の時代を懐かしむプーチンは、ソ連帝国、強いロシアの復活、失われた領土の回復を大きな目標に掲げます。まさに、スターリンと同じです。

 その際の大義名分は、ロシア系住民の保護です。これもスターリンと同じです。そして、ロシア連邦から離脱して独立しようとする各地域の民族主義者に対しては、徹底して弾圧するのです。

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