気温差が激しく、底冷えした11月中旬の朝8時。東京・後楽園駅前で5人の女性が一列に並び、『Mickey』の音楽が始まるやコートをパッと脱ぎ捨てた。路上にいきなり現われたチアガール。全力で激しくダンスをしながら、通勤途中の会社員や有名私立校の小学生たちに“勝手に”「ゴー、ファイト、ウィン!」とエールを送る。
正式に言うとチアガールではなくチアリーダー。彼女たちは社会人で、普段は整体師や医療従事者などとして働き、全日本応援協会「全日本女子チア部☆AJO」に所属する。部長でフリーアナウンサーの朝妻久実さんは話す。
「もともと朝チアは初代リーダーの齊藤彩さんが一人で新宿駅前で始めた活動でした。13年前、その姿を見た私はまさに人生のどん底の時期。テレビ局の入社試験は70社落ち、地方局での契約も1年で終了。上京したもののフリーアナの仕事も皆無。そんな時に齊藤さんの姿に感動して活動に加えてもらい、おかげで気持ちが前向きになり仕事が増えたんです。チア番組の司会のお仕事をいただいた時に確信しました。応援は幸福を呼ぶと」
そんな活動は人づてやSNSで伝わり、メンバーは10人に増員。理学療法士として小児施設で非常勤勤務する加門知美さんもそのひとりだ。
「大学時代にチアをしていたので朝チアのニュースを見て興味を持ち入部しました。朝チア後は職場に向かいます」
素通りする人がほとんどだが、走行中の軽トラや遠くのバス停から手を振る人も。そして、「応援」する彼女たちを応援する支援者もいる。突然「いってらっしゃい」と言われたら驚くが、たまにはこんな1日の始まりがあってもいい。
取材・文/河合桃子
※週刊ポスト2022年12月9日号