人生100年時代と言われるなか、「健康寿命」が注目されている。活発に過ごせる時間をいかに延ばすかは重要なテーマだが、九州で「住むだけで健康寿命が延びる家」が発売されたという。
「今年8月に販売開始直後から、多くの問い合わせをいただいています」
そう明かすのは、九州を中心に住宅事業を手掛ける芙蓉ディベロップメント代表取締役の前田俊輔氏。同社が発売したのは、その名もずばり「健康寿命延伸住宅」だ。住むだけで血圧が下がり、健康寿命が延びるという。
これまでも“健康”を謳う住宅はあった。特に近年は室温や湿度を一定に保つ「高気密・高断熱」仕様が増加した。高断熱が健康によいとされるのは、外気の影響を受けずに室内の温度・湿度などを保つことで、ヒートショックや病気のリスクの軽減が期待されるためだ。ただ住む人に対するエビデンスが確立されているとは言い難かった。
一方、前田社長は「科学的根拠に基づく家が必要」と言う。その最大の特徴は、医療や介護の分野で実績のある「ヘルスケアコアシステム」を、高気密・高断熱住宅に組み込んだ点だ。
「同システムにより健康を管理し、温熱環境のコントロールも行ないます。具体的にはエアコンを遠隔で操作することで、居住者に快適かつ健康な温湿度を保ちます。住む人の健康リスクは個々人のバイタルサイン(血圧・脈拍・体温の数値)からAIが赤(警告)・黄(注意)・緑(平常)を表示します」(前田社長)
つまり、居住者の感覚ではなく、医学的指標である「バイタルサイン」に基づき、健康のために適した温湿度をシステムのAIが判断する仕組みだ。その結果、血圧を低下させ、様々な疾患の予防につなげられるという。
発売に先駆け国交省の補助事業に採択され全国に70棟を建設、実証実験を数年にわたって行なった。その結果血圧が10mmHg低下するなど、多くの人でその効果が確認されたという。
前田社長は建築の専門家だが、「医学博士」の肩書きも持つ。博士論文のテーマは「バイタルサイン」に関するものだ。
「バイタルサインは、健康状態を知るための重要な指標です。しかし、ただ測るのではなく個人ごとの特性をつかむことが大事。私たちは統計学を用いて個々人の異常値を検知し、それを複合的にスコア化してアラートを出すAIシステムを開発しました」(同前)