ワールドカップ・カタール大会のグループリーグ第3戦で日本代表が強豪スペインに逆転勝利。グループリーグで見事1位通過を果たした。この熱戦を、本誌・週刊ポスト記者は、渋谷駅からほど近いスポーツバーで観戦した。
試合開始1時間前の午前3時の渋谷は人もまばらで、タクシーの運転手さんも「いつもと変わらないね」と語っていた。この時点では日本代表のユニフォームを着た人もハチ公前にポツポツいる、という程度。センター街の客引きも暇そうで、「サッカー観戦できる居酒屋空いてます」と道行く人に声をかけていたが、誘いに乗る人はいないようだった。
それでも試合開始30分前になると、日本代表ユニフォームを着たサポーターの若者がセンター街のスポーツバーなどに向かって「オーニッポン~!」と歌いながら歩いてきたり、「バモス!」(vamos=スペイン語で“さあ行こう”といった意味で使われる)と、すれ違う人に声をかける日本人の若者が現われた。
試合開始直前、いざスポーツバーの店内に入ると、約半数が日本代表ユニフォーム、私服が残り半数。みな真剣に中継画面を見つめていた。泥酔した客はほとんどおらず、ピッチに日本代表が登場すると片手をあげて自然と「オーニッポン~、ニッポン~、ニッポン~、ニッポン~」の大合唱に。
社会人男性3人組に話を聞くと「もしあのスペインに勝ったら渋谷めっちゃおもろいやん? と思って、今日はあえて生観戦に来ました。このあと仕事なので3時まではカプセルホテルで仮眠して整えてきました。勝ってくれないことには仕事のモチベーションも上がらない」とのこと。
一方、日本代表のことをほぼ知らないというナンパ目的と思しき大学生もごく少数混じっており、前半に日本が先制された後には「サッカー観ないで騒ぎたいだけなら帰れや!」「おまえら黙っとれ!」と他の客に怒鳴られて、一瞬ピリッとした空気になった。
後半に入り、日本が得点を重ね逆転すると、自然とハイタッチが発生、店内もより一体感が増した。試合終盤は、ルイス・エンリケ監督の顔が画面に抜かれるたびに「焦ってる! 焦ってる!」とコールが起こる興奮状態に。
後半ロスタイム7分と表示されると「7分が長すぎる」「ドーハだからなにが起こるかわからんで」といった不安の声が飛び交った。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、店員さんも含めて全員が「うおー!」と叫びながら、ハイタッチしたり飛び跳ねたりして歓喜のるつぼに。うれし涙を流す男性サポーターもいた。
興奮冷めやらぬなか、森保監督のインタビューが始まるころには20人ほどの若者が渋谷のスクランブル交差点へ向かって足早に店を出て行った。センター街からスクランブル交差点へ向かって各スポーツバーや飲食店から続々と人が抜け出し、ここでも至る所でハイタッチや「オーニッポン~!」のコールが発生。スクランブル交差点には警官隊が待ち構えて大声で交通整理にあたったが、目立ったトラブルや喧嘩などは見受けられなかった。
7時以降になるとサポーターたちは徐々に帰途につき、入れ替わるようにサラリーマンや通学する学生が増えてきた。熱狂と興奮の渋谷だったが、コンビニ前など、路地にはゴミが散乱していた。現地カタールでは日本のサポーターたちのゴミ拾いが称賛されていたが、渋谷では違ったようだ。