9月19日、英ロンドン・ウェストミンスター寺院にて執り行われた、エリザベス女王(享年96)の葬儀。わが国からは天皇皇后両陛下が参列され、おふたりが「黒いマスク」をおつけになっていたことが話題になった。『この1冊でOK!一生使えるマナーと作法』などの著書がある、日本マナー・プロトコール協会理事長の明石伸子さんが言う。
「マナーとは本来、いつも同じしきたりに従うものではなく、状況に応じて柔軟な対応をすべきものです。両陛下は国内ではいつも白いマスクをおつけになっていますが、葬儀の際に他国の来賓のかたがたがマスクをしていない場面ではお取りになり、王族のかたがたが黒いマスクをつけている場面では、両陛下もそれに合わせて、黒いマスクを選ばれたのでしょう」
エリザベス女王の葬儀をきっかけに、日本でも黒いマスクが葬儀での装いとしての意味合いを強く持ち始めた。
『「育ちがいい人」だけが知っていること』の著者で、マナースクール ライビウム代表の諏内えみさんが言う。
「改まった場でのマスクは、白か黒、薄いピンクやベージュ、グレーなどが無難。一方、ビジネスシーンでは水色や黄色などは違和感があります。その場やご自身の服装から浮いていないのが大前提です」
コロナ禍の前は、黒いマスクどころか、白いマスクも、冠婚葬祭や面接といった改まった場では「マナー違反」とされてきた。しかし、いまの日本の基準では「屋外ではマスクは不要」といわれてはいるものの、多くの人が集まる場では、マスクの着用は暗黙のルールになっている。
「ノーマスクが気になる場合、電車内のように混雑する場所や店舗の中などであれば、同伴者がマスクをつけていないときに“マスクをつけてください”と言ってもいい。一方、屋外ではもうマスクは必須ではないので、とがめるのではなく“屋外だけれど、私は気になってしまうので、できればつけてもらえるとありがたいです”とお願いするのが望ましい」(明石さん)
ウィズコロナでは、マスクの着用は個人の裁量にゆだねられているからこそ、「ねばならない」と押しつけるのは、それこそがマナー違反というわけだ。マスクの扱いが特に難しいのは、食事の場。人によっては、食べ物を口に入れるとき以外はマスクをつけていることもある。
「食事の前に“マスクはいつもどうなさっていますか?”と、尋ねておくのもよいでしょう。基本的には、神経質なかたの考えに合わせるのを意識することで、不快な思いをさせません。また、外したマスクをあごや片耳、手首に掛けたままの状態は、だらしない印象を与えます。できるだけマスクの裏側を見せないよう、二つ折りにしてマスクケースなどに入れ、さらにバッグに入れて、相手の視界に入らないようにするのがベストです」(諏内さん)
※女性セブン2022年12月15日号