私たちの食卓に欠かせない牛肉。いま、世界からも注目される「和牛」は味も品質も飛躍的な進化を遂げています。今年10月に開催された5年に1度の“和牛オリンピック”で日本一に輝いた「鹿児島黒牛」が育つ地で、その知られざる秘密を徹底解剖!
「和牛」と「国産牛」はまったく別物
スーパーに並んだパッケージにある表示でよく見るのは「国産牛」。これは和牛とはどう違うのか。公益社団法人「全国和牛登録協会」鹿児島県支部副支部長の坂元信一さんが言う。
「国産牛は、品種や生まれた土地に関係なく生まれてから出荷までの間、“日本で最も長く”飼育された牛のことを指します。つまり、乳用牛のホルスタインから生まれた牛や、外国での飼育期間がある牛も国産牛になり得ます。一方、和牛は肉専用種として指定された黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種と、これら4品種の間での交雑により生まれた牛に限られるのです」(坂元さん・以下同)。
「A5」「A3」など格付けは味の評価ではなかった
牛肉についている「A5」「A4」などの等級は、「A5ランクの牛肉が最もおいしい」と思われがちだが、味の基準ではないという。
「アルファベットが示すのは『歩留等級』といい、その牛から商品となる肉がどれだけ取れるのかをA、B、Cの3段階で評価するものです。数字の部分は『肉質等級』といい、脂肪交雑、肉の色沢、肉の締まりときめ、脂肪の色沢と質の4つを評価しています。1〜5の5段階で最高が5です。あまり知られていませんが『A5』も脂肪交雑(サシ)の入り方によってさらに8〜12番に分類されるんですよ」
日本人の食卓に牛肉が浸透してからわずか50年
江戸時代まで、牛は主に農耕用として飼育されていた。明治時代に入り牛肉を食べる文化が日本にも普及したが、「小柄な日本の牛を大型の外国牛と交雑させた結果、質が低下してしまい一時は純粋な和牛が絶滅の危機にあった」という。しかし戦後、兵庫県で肉質のよい強い遺伝子を持つ種牛・田尻号が誕生。
「田尻号は約1500頭もの子孫を残し、現在の黒毛和種の99.9%がこの田尻号をルーツに持つといわれています」
その後、品種改良や高度経済成長とともに牛肉はだんだんと一般家庭に浸透していった。
海外輸出量は5年前の2.5倍に!
いま、和牛には世界中の注目が集まり高く評価されている。財務省の貿易統計を見ると和牛の輸出量と輸出金額にはその傾向が顕著に現れている。
2020年の輸出量は5年前の2.5倍強になり、鹿児島の輸出量(2020年度)は前年度比30%増の1480トンにのぼり、過去最高を記録。国内における牛の流通も和牛を中心に増加傾向にあり、2020年度の肉牛処理頭数は105万頭と、前年度から微増。うち和牛が45.9%を占めるなど、国内はもちろん世界から日本の和牛肉に熱い視線が注がれている。
取材・文/土屋秀太郎 撮影/小倉雄一郎(本誌)
※女性セブン2022年12月15日号