たった1人の「子供の声がうるさい」という意見で廃止になった長野市内の公園。市に対して意見を言っていたのは大学の名誉教授だったことが週刊ポストの取材で明らかになった。その1人の声で、子供の遊び場である公園を閉鎖した市の対応には疑問の声があがっている。
長野駅から車で10分ほどの住宅地に、問題の青木島遊園地はある。青木島小学校、青木島保育園、青木島児童センターに囲まれた場所にある青木島遊園地は2004年に地区住民の要望を受け、農地だった場所を公園として整備した。長野市の公園緑地課が管轄となって公園を整備し、隣接する青木島児童センターや地域ボランティアによって雑草駆除などの管理を行なってきた。青木島児童センターの責任者はこう話す。
「児童センターは青木島遊園地ができたのと同時期に設立されました。保護者が就労していて自宅に不在の小学1、2年生を下校時間から保護者の仕事が終わるまでここで預かっています」
ところが公園ができてからしばらくして、公園付近に自宅があるひとりの男性から児童センターに苦情が入る。国立大学の教授(当時)を務めていたこの男性は、 「子供を迎えに来る保護者の車のエンジン音がうるさい」と主張したという。児童センターの関係者は言う。
「児童センターはこれを受け、駐車場に面した児童センターのガラスに、エンジンをかけっぱなしにしないよう張り紙をするなど対応しました。それでも『車のエンジン音がうるさい』という男性からの苦情の声は、変わらず児童センターや市の公園緑地課に寄せられました。市の公園緑地課はさらにそれを受けて、男性の自宅前にあった公園の入口を移動させ、自宅に近い場所で遊ばせないように植樹して子供の遊び場を限定、雲梯の位置も男性宅から遠い位置へと移動させるなど、さまざまな配慮をしました」
教授だった男性は昨年3月に国立大学を退職し、名誉教授となった。すると程なくして、今度は青木島児童センターに「子供の声がうるさい」と男性から注意があったという。児童センターの責任者が説明する。
「遊ばせ方を考えなさいという話でした。小学校低学年に、静かに遊ばせるというのは困難ですので、現在は屋内で遊ばせるようにし、外での遊びは小学校のグラウンドを放課後に借りるという形で対応することを考えています」
公園に隣接する住宅に住み、男性とも面識のある住民は困惑気味にこう話す。
「子供の声はしますが、それは夕方まででそれほど気になりません。男性は教授だからといって偉そうにするわけでもないし、地域の集まりにもちゃんと参加していました。酒席でも普通に話す人で、特に神経質な性格という感じもありません。威圧されるような感じもない。ただ教育者という立場なのに、なぜ子供に対して寛容な目で見られないのでしょうか……」