10月、合同結婚式の末に生まれた小川さゆりさん(仮名)の会見中、教団から彼女の両親の署名を入れた「会見中止」を要求するFAXが届いたことは、大きな話題になった。同じ被害を生みたくないと訴える、小川さんはじめ、武田ショウコさん(仮名)、もるすこちゃんさんの3人の宗教2世の座談会が実現した。【全4回の第3回。第1回から読む】
深層心理に刷り込まれている
小川:私が教会を脱会したきっかけのひとつは、18歳で教会本部がある韓国の清平の御祓い修練会に参加し、精神が崩壊したことでした。精神科に入れられて、朝昼晩と除霊をさせられ、一時的に二重人格のようになってしまい、救急車で運ばれたんです。帰国後はうつで家にこもるようになり、教会に行かなくなった。
武田:私の場合は貧乏に耐えられなくて、16歳の時に兄と2人で家出をし、17歳の時に一人暮らしを始めました。高校に行かずにアルバイトを常に3つくらい掛け持ちして、朝から終電まで働いた。
私は幼少期にお金がなさ過ぎたトラウマなのか、お金に対する執着がすごいんですよね。バイトの給料日を5日ずつずらして、振込があるのを唯一の楽しみにしていました。
もるすこちゃん:私は大学で物理を学び神様の存在を証明したいと思っていたんです。だけど学べば学ぶほど、そんな簡単な話じゃないことが理性的にわかってくる。
あとは、障害を持った人に対する不寛容も許せなかった。身体障害やダウン症を持っている2世を知っていますが、教義的には「本来2世は祝福された存在だから障害を持つことはない」とされているんです。その家族は本当に生きづらい思いをしている。
小川:身体障害や性同一性障害の子が生まれてくるのは先祖の罪や悪霊の仕業だなんて、本当にひどい話です。
もるすこちゃん:だけど、教会を脱会した後でも、ザーッと雨が降り出した時に、「ああ、これは神様の涙なのかな」とか、ふと思ってしまうんです。「私がサタン側で活動してるから神様が泣いているのか」と。それぐらい深層心理に刷り込まれてしまっている。
小川:ずっと「神様かサタンか」ばかりを意識してきたので。働いていても、社会的な常識がないから、職場でもなかなかうまくいきませんでした。“曖昧”を許せないのと、意見が合わないと「この人はサタン側の人だ」と自然と遠ざけてしまう。
武田:私は「信仰を続けていないと地獄に落ちる」と言われていたので、それが怖いっていうのが、一番の葛藤でした。私だけじゃなくて、兄も両親も先祖たちも、全員が地獄に逆戻りしてしまう。
18歳の時、数学的に計算して地獄は存在しないという論文を読んで、その時になぜか霧が晴れたように思い込みが解けた。
もるすこちゃん:私が入った会社はすごく歴史がある会社で、家族的な雰囲気でした。会社の上司がお父さんみたいな感じで、ご飯もおごってくれるし、私を頼りにしてくれる。自分が初めて必要とされる存在になったように感じて感動しました。社会に出て、リハビリさせてもらったという感じです。
※週刊ポスト2022年12月16日号