スポーツ

サッカー日本代表が涙を呑んだ「PK」 先攻が勝率60%で有利とのデータも

惜しくもPKで敗れたサッカー日本代表(時事通信フォト)

惜しくもPKで敗れたサッカー日本代表(時事通信フォト)

 W杯のような大舞台でPKを蹴る──想像を絶するプレッシャーとの戦いだ。クロアチア戦後、長友佑都(FC東京)が発した「勇気を持ってPKを蹴った選手たちを称えてほしい」という言葉には、誰もが頷いたことだろう。PKをめぐっては、スペインが決勝トーナメントのモロッコ戦で3人連続失敗したことでも話題になった。

 よく「PKは運」などと言われる。しかし現代サッカーにおいてその表現はあまり適切とはいえない。いまやPK戦は情報戦かつメンタルの勝負であり、強豪チームは事前に必ず相手の緻密なスカウティング(分析)を行なったうえで、PK戦に向けて準備している。ただでさえ心理的プレッシャーのかかる場面なのだから、少しでも平常心を保つために情報を得ておくのだ。

 PK戦については、すでに様々な研究結果がある。経済学者でロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのイグナシオ・ パラシオス=ウエルタ教授の研究によると、ワールドカップでの勝率は「先攻59%:後攻41%」。チャンピオンズリーグになると「先攻63%:後攻37%」になるという。日本は残念ながら先攻で敗北してしまったが、PK戦は先攻が「勝率約6割」で有利だというデータが出ているのだ。

 また、『PK 最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?』(ベン・リトルトン著)によると、「キーパーがボールと同方向に飛べた場合、セーブする確率が30%増す」というデータもあるという。

 日本代表のGK・権田修一選手も今回のドイツ戦前に読んでいたことで話題になったビッグコミックスペリオール連載中のサッカー漫画『フットボールネーション』には、こうした先行研究を踏まえて、「失敗したキッカーを温かく迎えたほうが、次からのキッカーの成功率が上がる」「キックを決めた選手が肩より高く腕を上げて喜びを表すと相手の次のキッカーにプレッシャーを与える」といった興味深いデータが紹介されている。

 他にも「実はPKが決まるのは“真ん中”が多い」というデータもある。左右どちらかに飛ばないと「何もしていない」と思われるのを避けたいGK心理を突かれるのだ。

 また、PKの実践的な練習方法についても、ただ漫然とゴール前に並んで蹴るのではなく、わざわざセンターサークルからペナルティスポットまで歩いていく過程までを再現する練習が効果的とされている。実際の試合と同じ状況を経験することで心理的プレッシャーの克服には役立ちそうだ。

 日本が今後、W杯ベスト8や優勝を狙うのであれば、こうしたPK戦への対策も重要となる。すでに次大会への準備は始まっている。

※『フットボールネーション』 作/大武ユキ。運動科学総合研究所・高岡英夫氏の監修のもと、もも裏の筋肉・腸腰筋などインナーマッスル主導の動きや股関節の重要性など、身体面に注目して描かれるサッカー漫画。「日本をフットボールネーション(=サッカー先進国)にするには戦術や名監督より、世界基準のフィジカルとセンスを持った選手を育てることが必要」というテーマを掲げる。現日本代表の権田修一(清水エスパルス)や、岡崎慎司(シントトロイデン)、中村憲剛氏(元川崎F)といった日本代表レジェンドなど選手や関係者にもファンが多い。最新17巻発売中。

 

関連記事

トピックス

バスケ選手時代の真美子さんの直筆サイン入りカードが高騰している(写真/AFLO)
《マニア垂涎》真美子夫人「バスケ選手時代」の“激レアカード”が約4000倍に高騰中「夫婦で隣に並べたい」というファン需要も 
NEWSポストセブン
沖縄を訪問された愛子さま(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
天皇ご一家が“因縁の地”沖縄をご訪問、現地は盛大な歓迎ムード “平和への思い”を継承する存在としての愛子さまへの大きな期待 
女性セブン
TBS田村真子アナウンサー
【インタビュー】TBS田村真子アナウンサーが明かす『ラヴィット!』放送1000回で流した涙の理由 「最近、肩の荷が下りた」「お姉さんでいなきゃと意識しています」
NEWSポストセブン
「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「王・長嶋・金田座談会」を再録 2000年の夢のON対決にミスターが漏らした「ボクはもう御免。ノーサンキューだね。2度とやりたくありません」の真意
週刊ポスト
「寂しい見た目」の給食に批判が殺到(X /時事通信フォト)
《中国でもヤバい給食に批判殺到》ラー油かけご飯、唐揚げ1つ、「ご飯にたまご焼きだけ」と炎上した天津丼…日本・中国で相次ぐ貧相給食の背景にある“事情の違い”
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
家出した中学生を自宅に住まわせ売春させたとして逮捕された三ノ輪勝容疑者(左はInstagramより)
《顔面タトゥーの男が中学生売春》「地元の警察でも有名だと…」自称暴力団・三ノ輪勝容疑者(33)の“意外な素顔”と近隣住民が耳にしていた「若い女性の声」
NEWSポストセブン
田中真一さんと真美子さん(左/リコーブラックラムズ東京の公式サイトより、右/レッドウェーブ公式サイトより)
《真美子さんとの約束》大谷翔平の義兄がラグビーチームを退団していた! 過去に大怪我も現役続行にこだわる「妹との共通点」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《「来来亭」の“ウジムシ混入ラーメン”動画が物議》本部が「他の客のラーメンへの混入」に公式回答「(動画の)お客様以外からのお問い合わせはございません」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン