原則42万円が助成されている出産育児一時金について、政府は来年度から50万円程度に増額する方向で最終調整に入った。実現すれば、制度が創設された1994年以来、最大の引き上げ幅となる。経済的支援を拡充し、少子化対策を強化する狙いだ。
しかし、歯に衣着せぬトークで人気を集めるエジプト出身タレント・フィフィ(46)は、この施策に違和感を示す。自身も息子がひとりいる立場として、「政府は育児を線ではなく、点で見ているように感じます」と指摘した。
「出産育児一時金の増額は確かに助かりますが、これで本当に少子化対策になるの? どれほど効果的な施策なのか、疑問が残るというのが本音です。子どもは『産めば終わり』ではなく、育児には長いスパンでお金がかかります。もっと育児というものを長期的な視野で捉えた支援が必要でしょう」
岸田文雄首相は「子供、子育て対策をしっかり用意していきたい」と語っているが、それが「1回限りの8万円」にすぎないことには、批判の声が数多く上がっている。
厚生労働省が発表した人口動態統計によると、ひとりの女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が2021年は1.30で、6年連続の低下となった。2021年は出生数も約81万人と、過去最少を更新している。
また、理想の数だけ子どもを産み育てられる社会の実現を目指す公益財団法人1more Baby応援団が今年、既婚者2955名と40代での出産者409名にアンケート調査を実施したところ、「『2人目の壁』は存在すると思う」と回答する人が75.8%を超えた。同アンケートの2014年から行われており、過去最高の数字になった。2人目の壁とは、「生活費や教育費に関連した家計の見通しや、仕事等の環境、年齢等を考慮し、第2子以後の出産をためらうこと」を指す言葉だ。こういったデータからうかがえる現代の夫婦の悩みに、フィフィも理解を示す。
「日本はセーフティーネットがしっかりしているので、低所得世帯や、ひとり親世帯には十分な補助があると感じます。むしろ問題視すべきは、中所得世帯で少子化が進んでいること。自分たちの収入だけで子育てすることに負担を感じている家庭が多く、彼らは『教育費がかかる』や『産後の職場復帰がまだ難しい』、『増税されたら生活費がかさむ』といった不安を抱えているわけです。
それなのに、政府の少子化対策の議論は出産という“子育ての最初期”ばかりに集中している。少子化対策と言うなら、こうした教育費の負担軽減のための政策も打ち出すべきです。奨学金とは名ばかりの“学生ローン”をめぐる問題についても解決しなければなりません」
子どもたちに不寛容な社会の空気も、問題だ。
「『子供の声がうるさい』というクレームのせいで、長野市のある公園が廃止決定になった件も最近SNSで話題になりました。子育てに不寛容な社会では、子供を産みたいと思えない人が増えるのも当然ですよね。育児をめぐる悩みや不安は幅広く、出産の一時金支援だけでは決して解消できません」
育児をめぐる悩みの本質を捉えた支援が今、求められている。