池袋シネマ・ロサでの『カメラを止めるな!』上映後にゲリラ的に開催されたイベントの数々は、作品が大ヒットする要因の一つとなった。その裏側を、池袋シネマ・ロサ支配人の矢川亮氏に、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が聞いた。
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──上田慎一郎監督やキャストたちによる熱心な宣伝活動に対し、劇場側はどう迎え入れましたか?
矢川:もうこれは徹頭徹尾付き合おうと、事前に何も言われてなくても、準備をしていました。
最初は申し訳なかったんです。なにせ全く告知のないまま、毎日のように舞台挨拶が展開され始めたんです。毎日、一生懸命に来てくれているのに、初期の数日間はマイクも無しの地声で「ありがとうございました!」って言っていただいてたんです。だから、挨拶できるように『カメ止め』を上映する時はマイクから何からあらかじめ全部用意して、上映後に監督たちがすぐに飛び出てもいいようにフォローしてあげようと腹を括っていました。
この舞台挨拶がさらなる宣伝になるわけです。毎日舞台挨拶をしてるらしいと聞いて、どんどんお客さんが増えていきました。
お客さんもK’sの最終回を観終わった後、大急ぎで当館に来たり、キャストと一緒に新宿から池袋まで移動した人もいたようです。
だんだん動員が止まらなくなってきて、当館もレイトショーだけじゃなくて上映回数を増やさないと対応できないという状態が七月に入ってから始まりました。
レイトの前にもう一回『カメ止め』をかけるとなると、その入れ替え時間が必要になります。ロサの規模だと通常は十五分か二十分なんです。
でも、「いつ監督たちが来てイベントをやるかわからないから」ということで、入れ替え時間を五十分に決めたんです。彼らは舞台挨拶をやって、希望者にはパンフレットにサインをします。満席だと、二、三百人いたら全てさばくのに五十分近く必要になります。ですから、それに対応できるようなタイムテーブルを組みました。
変な話、その入れ替え時間を全部足して詰めていったら、『カメ止め』はもう一、二回上映できるんです。でも、絶対それはしないようにしようと。
とにかくお客さんが少なかろうが多かろうが、監督かキャストが来て「舞台挨拶をやらせてほしい」となったときに、「時間がないから駄目」と断わらないようにしようって決めて、ずっとそうしましたね。