1万2000人から720億円もの投資資金を集めている投資会社の身辺が急速に慌ただしくなってきた。出資者から、「投資資金が引き出せない」という声が相次ぎ、彼らを原告とした多くの訴訟が起きている。巨額の投資トラブルがうかがえる状況だ。
順を追って説明しよう。その投資会社の名前は「エクシア合同会社」。東京・六本木の超高層ビルのワンフロアを借り切り、家賃は月額5000万円。50億円ともいわれる内装費をかけたド派手な豪華オフィスは、多くの投資家を魅了した。
今年3月には関西ガールズコレクションのメインスポンサーとなり、繁華街に大型の広告看板を設置。「勢いのある投資会社」と認識する投資家も多かったようだ。ところが──大手全国紙社会部の記者が語る。
「この6月頃から、エクシアから投資資金が引き出せないという投資家の声が相次いでSNSに投稿され、ついに10月にはエクシアに投資資金の払い戻しを求める集団訴訟が動き出しました。投資詐欺の一種であるポンジスキームも疑われ始め、捜査機関もその動向を注視。多くのメディアが取材に動いています」
訴訟が頻発したことと関係しているのか、11月には六本木のオフィスを退去し、都内の下町、墨田区・錦糸町の雑居ビルに移転。さらに同月末には、エクシアの仮想通貨子会社が、資金不足を理由に金融庁から業務停止命令を受けた。そして、ついには経営体制を変更すると発表、代表社員(株式会社でいう代表取締役)の退任に動いているようだ。
にわかに騒がしくなったエクシアだが、多くの投資家が疑っているのは、エクシアに「運用実態」があったのか、ということだ。エクシアは毎年2割~4割という驚異的な利回りを公表しているものの、その運用については、FXなどのCFD(差金決済)取引といったあいまいな説明しかされていない。
エクシアの説明によれば、投資家から直接出資を受ける日本のエクシアは、直接資金を運用せず、シンガポール法人に送金し、そこが運用するというスキームだという。日本のエクシアの財務状況は開示されているものの、実際に運用しているシンガポール法人の実態は非開示だった。
「投資家たちの調査で、シンガポール法人は赤字を計上しており、現預金が非常に少なく、数百億円もの資金を運用しているとは思えない会社だと指摘されました。現在は電話番号も使用されておらず、“会社として実態があるのか?”と疑問視されています」(前出・社会部記者)
通常、1万人を超すような不特定多数から資金を集めている投資会社は、金融庁に金融商品取引業者として登録しており、管轄地域の財務局などに会社の状況を報告するなど、行政の一定の監督下に置かれている。しかし、エクシアは金融商品取引法(金商法)の規制が及ばないスキームで資金集めをしていた。投資家は、エクシアの「社員権」を取得し、出資金を払い込む。そしてエクシアから分配金や出資金の払い戻しを受けるシステムとなる。この「社員権販売」なら金商法の規制が及ばない。