放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、高田氏がいま夢中になっている、お笑いコンビ・モグライダーについてつづる。
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18日に開催。今年の『M-1』には予選で落ちちゃったから出られないが私はぶっちぎりで「モグライダー」に夢中である。
見れば本物のボケだなとすぐ分かる頭の悪そうな顔をしているのがともしげ。芸風的には古くは間寛平、ジミー大西、ウド鈴木の系譜なのだが人が悪い。今あげた3人はおバカだが人間的に良い人という評価。ともしげは人一倍、人が悪い。人格に問題があってひたすら腹黒い(これが面白い)。番組などで他の芸人が失敗すると平気で大笑い。たしなめられるとずっと思い出し笑いをしてしくじりを噛みしめている。この難しい手綱を捌いているのがつっこみの芝。惚れぼれする的確なつっこみをみせる。今ではプロが裏で集まると「芝はうまい」「あの若さであの間で入るとは」と大絶賛。
どうしても会いたくてやっと私のラジオに来てくれた。なんたって今どきいないリーゼントである。昔なつかしい匂いがした。私の高校時代なぞ男子校で頭もさほど良くなかったから仲間はみんなリーゼント。ジェームス・ディーンとエルビス・プレスリーに憧れた世代である。リーゼントの流れは宇崎竜童へわたり、横浜銀蠅、そして横山やすし、島田紳助である。「なんか都下の不良みたいだネ?」と問えば「いやすごい田舎者なんですよ。愛媛県のずっとずっとはずれ。寝返り打ったら高知県ですよ」。うまい! この言いまわしが気がきいている。寝返り打ったら高知県。なかなかあの年齢で内藤やす子のようなことは言えない。
ネタはいつもぶっつけ本番でともしげにやらせて、それを訂正していく。テレビで「3分」とか「5分」とか言われても時間通りできない。たいてい尺が長すぎてしまう。全盛期の“コント55号”の作り方をイメージすれば良い。私は心の中で秘かに5年後にはテレビ番組の相当数を芝が仕切っていると予言する。なにがいいかと言うと決してものおじしないところである。肝がすわっているのだ。
古い演芸も活性化。講談の神田伯山、女流浪曲の玉川奈々福の活躍である。私のラジオで「来年2月、GINZA SIX地下の能楽堂で奈々福の独演会があって、私もゲストで出るんだよ」みたいな話をしていると、つい私の口から浪曲、あの広沢虎造の『清水次郎長伝・石松代参』が口をついて出てうなってしまった。昔は銭湯で全員うなってましたよ。しかし若いスタッフはポッカーン。誰ひとり私の浪曲にふれられる人間がいなかった。夕方FAXがカタカタ「虎造、節まわし、みごと。完璧。奈々福」とあった。きく人がきけば分かるのだ。
※週刊ポスト2022年12月23日号