「これらは自宅の仕事場と家族たちの部屋をつなぐ廊下に、いつも置いているものです。家内が丁寧に保管して飾ってくれています」
1年の半分近くを旅先で過ごしてきた作家・伊集院静氏は、国内外から持ち帰ってきた品々を見渡しながらそう語る。
伊集院氏の最新エッセイ集『旅行鞄のガラクタ』は全日空グループ機内誌『翼の王国』での人気連載を書籍化したもの。伊集院氏が世界中を旅する中で出逢い、持ち帰ってきた、愛すべき34の土産品にまつわるエピソードが綴られる。
ヤンキースタジアムで松井秀喜選手が特大ホームランを放った日に買ったレインコート、中国で見つけた三峡石など、思い入れの詰まった“ガラクタ”たちをひとつひとつ見つめながら伊集院氏は語る。
「旅は人間を日常から解放する営みです。良い旅行をするには、毎日5分間旅先のことを考えると良いでしょう」
人生の達人が綴る本書の読了後には、贅沢な長旅に出たような気持ちになるだろう。なお、同書に登場する品々を展示する「旅行鞄のガラクタ展」は、小学館ビル1階で1月31日まで開催されており、作家と旅した「小さなたからもの」を間近でみることができる。
旅情を感じさせる素朴で愛らしい土産物
●ロードレースの自転車の人形(ベルギー)
自転車競技がさかんな街・ヘントで買い求めた人形。どことなく凛として頼もしい。
●トリニティ・カレッジのクマのぬいぐるみ(アイルランド)
作家の城山三郎氏の勧めでダブリンへ一人旅をした際に、トリニティ・カレッジ(ダブリン大学)で購入。
●三峡下りの川原の三峡石(中国)
長江の上流で拾ったパンダの首のような色彩の石。三峡石はどの石の中央にも白線がある。