ライフ

比叡山大阿闍梨が説く 心を整えるための最澄の教え「山家学生式」

 2022年もまもなく年の瀬。新しく迎える年がよい年になるよう、静かに振り返る時間をとってみませんか。『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』を出版した比叡山の光永圓道大阿闍梨が、心を整えるため最長の教え「山家学生式(さんげがくしょうしき)」について教えてくれました。

覚性律庵 住職 光永圓道

比叡山の光永圓道大阿闍梨が、心を整えるため最長の教え「山家学生式」について説く

 * * *

「山家学生式」とは

 師走には、まず「終わりよければすべてよし」の心持ちで、この一年を振り返りたいものです。はるか昔のご先祖さまからいまにいたるまで、日本人は「言魂」という考え方を大切にしてきました。言葉や文字を正しく丁寧に扱えば、その言葉や文字の意味が、心に染み入ってきます。汚い言葉遣いは口論を呼び、感謝の言葉は親愛の情を育むのです。

 天台宗を開いた伝教大師さま(最澄)は、僧侶の心得を説くために『山家学生式』を著しました。「国宝とは何物ぞ」ではやや堅いイメージかもしれませんが、本質的には「私たちがいちばん大切にしなければならないものはなんでしょうか」という、シンプルな問いかけです。伝教大師さまは「道心を持つ人」こそ素晴らしいとおっしゃいました。

 この「道」もまた言魂を感じさせます。自分の「為すべき事を為す道」は、「善く生きようとする道」でもあるでしょう。言葉を染み入らせるために筆を執り、手づから心を込めて書くことで、気持ちを新たにしませんか。

美しい文字を綴る

美しい文字を綴る

慈悲のための入り口

『山家学生式』には、心を整えるための方法が具体的に示されています。骨の折れる仕事(悪事)はなるべく自分自身で、誰にでもできる仕事(好事)は他の人に委ねること。頑張りすぎる傾向にあるかたは、すべての仕事を自分ひとりで抱え込み、悩んでしまいがちです。

 この傾向は、家事や仕事にも通じるでしょう。完璧な家事を追求するあまり、パートナーやお子さんの中途半端な手伝いに腹を立ててしまうお母さまがたは少なくないといわれます。しかし、時には「できないことは、できないでよろしい」と、手放してしまう瞬間があってもよいと思うのです。

 任せた相手が、あなたのように完璧にこなすことができなくても、まずは信頼して任せることこそが、大切な皆さまとあなた自身を成長させる糧になるのではありませんか。「慈悲」とは、親子においても、ご近所づきあいにおいても、また仕事場においても「信頼と許しの心」を入り口として実現すべき目標です。

覚性律庵 住職 光永圓道

覚性律庵 住職 光永圓道

【プロフィール】
覚性律庵 住職 光永圓道(47才)/1990年に得度受戒、2000年に延暦寺一山・大乗院住職に。2009年、千日回峰行を満行し、北嶺大行満大阿闍梨となる。現在、大乗院住職、覚性律庵住職。今年11月、仏門の修行と千日回峰行の荒行を経て到達した「心地良く生きるための作法」を説いた『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』を出版。

撮影/黒石あみ

※女性セブン2023年1月1日号

「山家学生式」で心を整える

「山家学生式」で心を整える

比叡山

光永圓道さん

 

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン