当初は新宿のK’sシネマと池袋シネマ・ロサの二館のみで始まった『カメラを止めるな!』の上映だったが、連日の満席を受けて全国のシネコンでも拡大上映されることになる。その時の様子を、池袋シネマ・ロサ支配人の矢川亮氏に映画史・時代劇研究家の春日太一氏が当時の裏側を聞いた。
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矢川:正直、シネコンさんが拡大した最初の一週間は、やっぱりガクーンってお客さんが減っちゃったんです。でも、拡大上映のときにマスコミが大きく扱ってくれたので、次の週ぐらいからバコーンと戻ってきて。だから、影響があったのは数日でしたね。一日に七、八回やって、そのうち、五、六回は満席になっていました。
ただ、こういう非常に特殊な興行になってしまったので、一部の地方のミニシアターの皆さんにはちょっと歯がゆい思いをさせてしまいました。本来であれば、ミニシアター冥利に尽きるような作品興行なんですよ。シネコンより後にやらざるを得ない環境になってしまった劇場さんがあったみたいなので、それは――僕らが言うことじゃないですけど――ちょっとかわいそうな思いをさせた劇場もあったんだなと思いました。一気に三百スクリーン以上いきましたから。
―― 一方で池袋シネマ・ロサではかなりのロングランになりました。
矢川:とにかく終わりは決めずにやりました。シネコンさんだってずっと上映できるわけではないから、こちらはとにかくずっとやろうと。それで公開百日記念とか、二百日記念とか、年越しとか、定期的にイベントをしました。それでも、公開して百日目ぐらいまでは相変わらずスタッフ、キャストの誰かしらが舞台挨拶に来てましたね。
うちは比較的フレキシブルに対応しやすいんです。『カメ止め』に限らず、けっこうロングランしますから。「よそが終わったあともうちはやってるよ」みたいな感じのことが多いんですよね。
例えば『君の名は。』が一番長くて三百三十七日。『カメ止め』は二百五十八日。もともとそういう感じで「一日でも長くやろう」という気風があるんです。