ついに最終回を迎えたNHK大河『鎌倉殿の13人』。約1年の放送期間中、個性あふれる登場人物が現れては、権力闘争などを通じて退場していったことも大きな話題となった。そうしたなか、主人公・北条義時を演じた小栗旬の傍に、最初から最後まで寄り添ったのが、山本耕史演じる三浦義村だ。作中、筋肉隆々の上半身を披露したことも注目の的だった。2022年に目覚ましい活躍ぶりだった山本について、ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏が綴る。
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今年、テレビドラマでよく山本耕史さんの姿を観た気がする。それも思い返すと、彼の表情はいつも一定である。斜に構えて、眉間に皺を寄せて、何やら良からぬことを考えていそうな雰囲気。そして白い艶肌ながらも、ボディビルダーの域に到達しそうな完成された肉体美。これが近年の彼のイメージだ。
はて。だいぶ古臭い話になるけれど、私の中で「山本耕史=車椅子の優しい少年」というイメージが染み付いていた。『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系列・1993年)の末っ子・文也役である。あんちゃんと再会をして号泣、得意の絵をうれしそうに描く……といったシーンが脳裏に焼きついていただけに、昨今の山本さんはどうも別人のようである。
胡散臭い役が続いた2022年
2022年、彼をよく観たと記憶されている理由に『鎌倉殿の13人』(NHK総合)で演じた、三浦義村(通称・平六)役の影響は多分にある。この役、初っ端から胡散臭かったのを覚えている。北条義時(小栗旬)の友人という設定でありながら、北条家、坂東武者、源氏一門……と本作における、あらゆるセクションに顔を出す。時には揉め事にも顔を突っ込む。「え……ひょっとして、この人がフィクサー……?」と、何度も暗躍ぶりを疑ったこともあった。
冒頭で山本さんの最近のイメージだと書いた通り、平六はいつも何かを企み、人を簡単には信用しないとバリアを張る。そして隙あらば、上半身裸体となって弓の練習(?)をしていた。ただ次から次へと出演者が亡くなっていく、波乱の『鎌倉殿の13人』において、初回から最終回まで生き切った。やはり、平六は小四郎(義時)の盟友だった。
2022年における、山本さんの胡散臭い役柄は1作品で終わることはない。『競争の番人』(フジテレビ系列・2022年)でのゲスト出演は、ホテル経営者でありながら、裏社会でも生きる天沢雲海を演じていた。要はこちらも胡散臭い役で幕引き。最終回が間近に迫った『クロサギ』(TBS系列)ではシロサギの白石陽一を演じている。連続ドラマの中盤から登場して、いつも好タイミングでクロサギの黒崎高志郎(平野紫耀/King & Prince)に手を貸す。やはりいつも不機嫌そうで、文也役のように邪念のない笑いを見せることはなく、2022年が終わろうとしている。