2023年3月に開幕する野球の祭典「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」。11月に行なわれた強化試合では28人の選手が招集されており、1月末の最終選考ではメジャー組が選出される見通しだ。パドレスのダルビッシュ有(36)が参戦を表明したことでも話題になったが、WBCのV戦士である岩村明憲氏(43)、投手コーチだった山田久志氏(74)らは、どんな投手の起用法を考えるのだろうか。
メンバーの半数を占める投手陣。一発勝負ゆえに起用は“調子次第”な面もある。山田氏が難しさを語る。
「原辰徳監督から投手陣のメンバー選考を任されましたが、そりゃ大変でした。最初はナショナルチームのコーチなんてそうあるものじゃないので、“よっしゃ、やってやろう”という気持ちですが、段々と不安になってきた。
大変だったのはバランスですね。先発、中継ぎ、抑えをどう配分するか。選ばれる人はみんな力を持っていますが、振り分けが難しい。あと今はそんなことないようですが、我々の時は連盟の方から『各球団1人は選んでほしい』という声があった。一方で落合博満監督の中日は不参加だから、岩瀬仁紀や川上憲伸といった好投手を選べない誤算もあった」
山田氏の采配で今も語り草になっているのが、第2回大会の決勝ラウンド、予選で先発していたダルビッシュ有(36)をクローザーで起用した場面だ。
「当初は藤川球児の方針でしたが、調子がなかなか上がってこない。それで監督と相談してダルビッシュでいくことになった。プロで抑えの経験がなかったので、本人は『勘弁してください』とやんわり拒否していたが、マウンドに上がってくれた。
ダルビッシュの不安はもちろん、土壇場で外された球児の気持ちも痛いほどよく分かる。当時は個々のプライドはしまって全員で“投手陣”という意識を持ってもらいたいと伝えていました」
そんな山田氏は今大会ではダルビッシュを先発の柱として考える。
「大谷翔平(28)が打者一本だとすると、先発の軸はダルビッシュと山本由伸(24)の2枚看板になるでしょうね。ロッテの佐々木朗希(21)は戦力になりますが、私がコーチなら先発と抑えの両方で考えます。あのストレートとフォークがあれば2009年のダルビッシュのように抑えでも十分に使える。三振が取れるし、コントロールもいい」
一方で岩村氏は今大会もダルビッシュの「抑え起用」を推す。
「先発メンバーは佐々木君と山本君が使えればいいですね。ダルビッシュ君はもちろん先発でもいいんですが、球数制限を考えるとクローザーもアリだと思う。そうなれば、巨人の大勢君(23)を中継ぎのポジションで使いたい。あとは先発には左のオリックス・宮城(大弥)君(21)やDeNAの今永(昇太)君(29)も選びたいですね」
果たしてどの選手が本番で躍動してくれるのか。目が離せない。
※週刊ポスト2023年1月1・6日号