人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、「敗血症」についてお届けする。
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渡辺徹さん(享年61)の訃報を受けて、「敗血症」という病気の質問を受けるようになりました。若い年齢で旅立たれたことで、「敗血症って何?」という疑問と怖さが多くの人の注意をひいたのだと思います。
本来、私たちの血液は無菌状態です。そこになんらかの感染が原因で細菌などが入って来てしまうと、病原菌が血流にのって全身に拡がってしまい、重篤な感染症を引き起こすことがあります。
まず、血液に病原菌が侵入した状態が「菌血症」でこの菌血症がさらに悪化し、全身に炎症が起こったり、さまざまな臓器の機能が損なわれるなどの全身症状が出た場合が「敗血症」です。つまり敗血症は最初に皮膚、呼吸器、腹腔内、血管内や胆道、尿路などの感染があって、それらの感染症をきっかけに二次的に重篤化して起こります。原因となる病原菌もさまざまです。
症状としては38℃以上の高熱や36℃以下の低体温(体温が低くなる場合もあります)、心拍数が1分間に90回以上の頻脈、呼吸数が1分間に20回以上の多呼吸で血中の二酸化炭素量が少ないこと、末梢血白血球が1μリットル(マイクロリットル)あたり1万2000より多い、または4000未満などがあります。はじめは風邪のような発熱や震えがみられ、脈が弱くなり、次第に呼吸困難やチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる)などがあらわれます。
大事なことは菌血症の段階で治療を開始し、敗血症となったら、即座に集中的な治療を開始することです。治療が遅れればショックを起こして血圧が低下し、複数の臓器に障害を起こす「多臓器不全」を引き起こすリスクがあります。多臓器不全となれば、全身状態の悪化から死に至る可能性が高くなります。この冬、コロナ禍で医療が逼迫してくると、このような重大な感染症の治療が遅れる可能性もあり、それも心配ですね。