男女ともに70代にとどまるという日本人の健康寿命。延ばすには、東洋医学も助けになる。源保堂鍼灸院院長の瀬戸郁保氏が指摘する。
「西洋医学は発病後の治療を目的としますが、東洋医学は発病以前のちょっと体調が悪いといった“未病”を扱います。頭が痛い、腰が痛いなど健康と病気のグレーゾーンの段階で処置を施し、未病から発病に転じないよう心がけることが、東洋医学に基づいて健康寿命を延ばすということです」
東洋医学では、人間の身体を「気」や「血」といったエネルギーが巡り、それらがバランスよくスムーズに流れることで健康が保たれると考える。エネルギーの流れを刺激するのが、ツボ押しだ。
「体内には気や血を運ぶ『経絡』が走っています。経絡を線路と考えれば、ツボ(経穴)は『駅』であり、ツボを押すことでエネルギーの巡りがよくなります。各経絡は様々な臓器と関係し、ツボを押せば臓器の働きも促されます」(瀬戸氏・以下同)
全身を巡る経絡は14本あり、うち12本は体の六臓六腑と結びつく。例えば心臓とつながる経絡「心経」の上にあるツボは血液を体に循環させると考えられている。
ツボ押しのポイントは、押すとツーンと鈍い痛みを感じる場所を押すことだ。位置は「寸」で表わし、1寸は親指の幅、2寸は人差し指~薬指の幅、3寸は人差し指~小指の幅を指す。
また、「漸増漸減」と言い、5秒ほどゆっくり押してゆっくり力を抜く。これを3回1セットで1日に何度押してもいい。
記憶力にもいい影響
基本を押さえたうえで、健康寿命にいいと考えられている81のツボについて解説していく。生活習慣病には、血管や臓器に働きかけるツボが効果的とされる。
「手首の内側のシワの端から1寸上(肘寄り)にある通里(2)は心経のツボで、血液の巡りをよくします。動脈を広げて血管の弾力性を増すので、高血圧や高コレステロールの改善が期待できます。腕骨(17)は、すい臓と関係のある小腸につながる経絡上にあり、インスリン分泌を促して血糖値を下げられる可能性がある。それとセットで押すと効果的なのが、陽谷(18)。このツボは、動脈と同様に硬くなると高血圧を引き起こす毛細血管に効いて血の巡りを改善します」