春4度、夏5度の全国制覇を成し遂げ、現代の高校野球に“常勝軍団”として君臨する大阪桐蔭高校。圧倒的な強さを誇る同校を褒め称える声がある一方で、「選手を集めすぎ」といった批判もある。西谷浩一監督は、そうした声をどう受け止めているのか。ノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。
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2022年の高校野球も、中心にいたのは大阪桐蔭だった。春のセンバツでは前年の明治神宮大会に続く2冠を達成した。史上初となる3度目の春夏連覇――そもそも、春夏連覇を二度達成しているのも大阪桐蔭だけだが――に挑んだ夏の甲子園では、準々決勝で準優勝の下関国際(山口)に敗れたものの、新チームも秋の大阪、近畿を制し、神宮大会も連覇を達成して来るセンバツへの出場が濃厚だ。
藤浪晋太郎(阪神。今オフにメジャー挑戦を表明)や森友哉(オリックス。今オフに埼玉西武からFA移籍)を擁して同校初の春夏連覇を遂げた2012年以来、この10年間でセンバツを4度、夏を3度制している(通算の甲子園制覇は9度)大阪桐蔭は全国の強豪・名門校の追随を許さず、盛者必衰の理も大阪桐蔭にはあてはまりそうにない。公式戦に勝利することよりも、敗れたことのほうが大きく報じられる学校など、大阪桐蔭ぐらいのものだろう。
新チームの主将は、同校史上最高の左腕と目されるエースの前田悠伍だ。前チームから主戦を任され、140キロ台後半のストレートにスライダー、チェンジアップ、ツーシームと、すべての球種がウイニングショットになり得る逸材である。走者を釘付けにする牽制の技術も出色で、2023年秋のドラ1指名が確実視される。
しかし、現代の高校野球では、球数制限などもあって、ひとりの投手が大会を投げ抜くことなど不可能で、複数投手の育成が求められる。
常に横綱相撲の大阪桐蔭を率いる西谷監督に、意外な采配が見られたのは近畿大会の準決勝・平安(京都)戦だった。
前田を休ませたこの試合で、先発のマウンドに上がったのは1年生の境亮陽。打順はなんと1番だった。さらに、リリーフ登板した南陽人や平嶋桂知(共に1年生)は、試合前のシートノックで外野や遊撃に入っている選手だ。根尾昂(現中日)のように、投打の二刀流を経験した選手がこれまでいなかったわけではないものの、大阪桐蔭は投打の役割がはっきりとわかれたチーム作りをしてきた印象がある。
試合後、西谷監督は言った。
「投手が1番に入ったケースはなかなかないですね。岐阜出身の境は、中学時代に県で1番か2番目に足が速い子だったそうです。打者としての適性もあるので、下級生である今は投打の両方をやらせています。南や平嶋も含めて、野手と投手を兼任する選手が1年生には多いです」