90才を迎えてなお執筆や講演活動を積極的に行うエッセイストの樋口恵子さんが「新たな一歩」を踏み出した。
樋口さんを理事長とする「高齢社会をよくする女性の会」メンバーが創立した「樋口恵子賞」の第1回受賞者が発表されたのだ。同賞は樋口さんが卒寿を迎えたことを記念して創立され、高齢者が生きがいをもって暮らせる社会の実現に向けて活動している人や団体を表彰し、目立たぬ分野で地道に努力を重ねてきた方の発掘に力を入れることが目的だという。
「私自身、これまでいろいろな賞を受賞してきたので、いくばくかの金額が積み上がっていて、かねてから周囲に『死んだら有意義に使ってほしい』と言ってきましたが、どうせなら生きているうちに賞金として世の中の“ファインプレー”に率先して拍手を送りたいと思ったのです」(樋口さん)
日本国内で活動していることが条件で、性別や年齢、自薦・他薦は問わない――こうした基準をもとに日本全国から寄せられた122件の応募から、早稲田大学名誉教授の浅倉むつ子氏、弁護士の渥美雅子氏、日本在宅ケアアライアンス理事長の新田國夫氏、公益財団法人さわやか福祉財団会長の堀田力氏の4名が選考委員として、個人賞1名・団体賞2名を選出した。
個人賞は日本の植民地政策によって開拓団として満州に渡り、敗戦時に取り残されて国籍を失った中国帰国者たちを支援する「中国帰国者センター」を運営する鈴木洋子さんに、団体賞は高齢化が進む高層団地で介護支援や子育て相談、世代間交流を行う「いこいの家 夢みん」と核家族化や非婚化に伴うお墓にまつわる問題をサポートする「エンディングセンター」が受賞。個人賞には30万円、団体賞には50万円が賞金として贈られる。
「他人が何かを始めた時、足を引っ張り合うのではなく、手を取り合って『素敵ね』と言い合うことができれば、世の中はもっと良くなると思う。この賞がその一助になれば、これほど嬉しいことはありません。いくばくかの蓄えに加えて、ここ最近、わりあい気楽に書いた本がありがたいことに売れているので、あと20回は続けられるのではないかと思っています(笑い)」(樋口さん)