年末年始のまとまった休暇を利用し、ちょっと足を伸ばそうという人も増えるだろう。たまにはいつもと違った場所を訪れるのもおもしろいのではないか。『怨念の舞台~名所の知られざる日本史秘話~』(昭文社)は歴史上でも興味深い事件が起きた現場などに目を向け、今の光景からは想像もつかない場所だったことを知るのにうってつけの“裏ガイドブック”。本書を編集した『なるほど地図帳』編集部に、歴史の暗部を垣間見ることができるスポットを聞いてみた。
由比ヶ浜・東勝寺跡(神奈川)
鎌倉市・由比ヶ浜は夏には多くの人が訪れる人気の海水浴場。サザンオールスターズの歌の歌詞にも登場し、1970年代の青春ドラマ『俺たちの朝』(日本テレビ系)などの舞台にもなり、甘酸っぱい青春のイメージをもつ人は少なくないだろう。
由比ヶ浜はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の舞台になっている。頼朝の腹違いの弟・義経と、義経の妾だった静御前(しずかごぜん)。その静御前にとっては愛する義経との間の子を沈めて殺された、深い悲しみの場所だ。
「頼朝に疎まれた義経は、壇ノ浦の合戦から7か月後、都を追われてしまいます。静御前も吉野の山までは一緒だったのですが、山の険しさに同行をあきらめ、その後、捕らえられ鎌倉に護送されます。このとき、静御前は義経の子を身ごもっていました。
頼朝に男ならただちに殺すと言われていたのに、生まれたのは男の子。頼朝の使者・安達新三郎清経は赤子を奪い命じられていた由比ヶ浜で、材木置き場に投げ込んで殺してしまったといわれています」(『なるほど地図帳』編集部。以下同)
鎌倉には北条一族が壮絶な最期を遂げた東勝寺の跡地もあり、14代執権・北条高時を祀ったとされる腹切りやぐらが残されている。
「東勝寺は3代執権・北条泰時が創建した北条氏の菩提寺。高時が1333年に新田義貞軍に追い詰められ、870人余の一族や家臣とともに立てこもり、最後は火を放って自決したといわれている壮絶なエピソードをもつ寺です。東勝寺はその後、再建されましたが、戦国時代に廃絶され今は石碑がひっそり建つだけの草地。腹切りやぐらはその先の山腹にあり、五輪塔や卒塔婆が立てられていますが……」
鎌倉駅東口側にある東勝寺跡。この地に立てば、鎌倉幕府の栄枯盛衰を感じるだろう。