中国の政府系シンクタンク「南シナ海戦略情勢調査計画」(SCSPI)は、米軍が2022年1月から11月までの間に、南シナ海上空だけで589回にわたって大型軍用機を派遣し、中国の軍事動向を中心とした情報収集を行っていたことを明らかにした。12月の飛行データはまだ確定していないが、SCSPIによると、米国は2021年12月に南シナ海地域をパトロールするために47回、大型偵察機を派遣しており、2022年1年間だけで、米軍は600回以上の軍用機を派遣したとみられる。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
米軍は沖縄の嘉手納基地とフィリピンのクラーク基地から、対潜哨戒機P-8Aや早期警戒管制機E-3G、偵察機RC-135Vなどを台湾海峡と南シナ海の地域に派遣し、情報収集している。
米軍に加え、オーストラリア軍機も頻繁に南シナ海上空を飛来し、中国が岩礁を埋め立てて要塞化している南シナ海のパラセル諸島(中国名=西沙群島)を中心に情報収集を行っている。
また米軍は2022年6月3日、RC-135C大型偵察機を東シナ海上空に飛来させ、上海から約160kmまで接近した。これは、中国が上海市近郊の江南造船所で中国では3隻目の国産空母「福建」を正式に就航させる数日前だったという。
これらの米軍の情報収集活動について、中国の軍事雑誌『海軍と商船』2022年12月号は「これらの近接偵察活動は中国が把握しているよりも、もっと多いはずだ。彼らは、ますます中国の海岸に近づいており、対立と摩擦のリスクを必然的に高めることになる」などと米軍の偵察活動を批判している。
しかし、中国軍機による台湾への威嚇や偵察活動は米軍機の比ではなく、米軍のこうした圧力がどこまで有効なのかは不明だが、米中対立が激化していることを象徴していることだけは間違いない。