1月8日に初日を迎える大相撲初場所の番付が発表された。125年ぶりに横綱・大関が1人ずつとなったうえに、61年ぶりとなる関脇・小結が4人ずつという珍しい番付になった。こんな事態が発生したのは、横綱・大関陣の成績が振るわない波乱の場所が続いているからだ。2022年は6場所すべての優勝力士が違う1年となり、7月場所から3場所続けて平幕力士が優勝。横綱に昇進する力士がいないばかりか、大関からの陥落が続いた。その結果、思わぬところに“計算違い”が生じている。日本相撲協会の「公式カレンダー」である。
先場所は前頭9枚目だった阿炎が巴戦の末に優勝を果たした。ただ、12勝3敗で巴戦に進んで敗れた大関・貴景勝については「1月場所で優勝すれば横綱昇進の可能性がある」(協会関係者)との声があるし、1人大関の異常事態を解消するために大関への昇進基準とされる直前3場所の合計33勝のハードルも下がるケースがありそうだ。
とりわけ2022年の秋以降は、横綱が休場し、大関陣も場所中に黒星が先行するような状況が続き、「番付崩壊」の状態に陥ってしまった。その結果として思わぬかたちで影響が出ているのが、相撲協会の公式カレンダーだという。ある若手親方は「カレンダーの中身と、土俵上での実態が、だいぶちぐはぐなものになってしまった」と苦笑する。
相撲協会の公式カレンダーは1月から12月まで各月に力士の写真が掲載され、番付発表日、場所の開催日程、前売りチケットの発売日などが書き込まれている。毎年福岡で開催される11月場所の会場の売店に翌年のカレンダーが登場する。
2023年のカレンダーは、1月は八角理事長(元横綱・北勝海)による土俵上での協会挨拶の写真で始まり、2月はひとり横綱の照ノ富士の土俵入りの写真だ。
「照ノ富士は両変形性膝関節症で9月場所を途中休場し、内視鏡手術をしたことで11月場所は全休。復帰の目途は立っていません。ひとり横綱だけに、2023年カレンダーの9月のページにも照ノ富士が登場しているのですが、正直、その頃には引退している可能性のほうが高いのではないか……」(前出・若手親方)
カレンダーの3月のページは貴景勝、正代、御嶽海の“大関3人衆”が並んでいる。しかし、このなかで大関として新年を迎えられたのは貴景勝だけ。御嶽海は9月場所で大関を陥落し、11月場所での大関返り咲きを目指したがさらに負け越して平幕に落ちた。正代も5度目のカド番で迎えた11月場所で負け越して関脇に陥落。「正代は1月場所で10勝以上を挙げれば、カレンダーで登場する3月になんとか大関復帰できるが、先場所の相撲を見る限り簡単ではない」(同前)とみられている。
4月のカレンダーは若隆景、豊昇龍、大栄翔、阿炎、逸ノ城、霧馬山という2022年9月場所での関脇・小結が並んでいるが、4関脇・4小結となった今度の1月場所でも三役に残っているのは若隆景、豊昇龍、霧馬山の3人だけ。大栄翔、阿炎は平幕上位にいるが、おかみさんへの暴力疑惑が浮上した逸ノ城はコロナガイドライン違反で1場所の出場停止となり、来る1月場所は休場。その次の3月場所では十両に転落していることになる。
カレンダーでは5月、6月、7月、8月は幕内力士が8人ずつ番付順に並んでいるが、姿が写っているなかでは千代大龍と豊山がすでに引退しており、先の11月場所で全敗の照強は十両に転落している。
「カレンダーは基本的に前年の9月場所の番付を基準に構成されるので、カレンダーのページをめくって登場する頃には力士が番付を落としたり引退したりしているということは起こり得るが、新年を迎える段階でここまでグチャグチャになることは珍しい」(前出・協会関係者)
2023年10月のカレンダーに貴景勝、正代、御嶽海といった2022年9月場所での三役9人が再登場するが、その頃にはこの中から新しく横綱や大関が誕生しているのだろうか。