少しずつ発行枚数が減ってきたとはいえ、まだまだ楽しみにしている人も多い「年賀状」。それに使われる年賀はがきは、日本郵便社員の切手デザイナー8人がデザインしている。年間約40種類発行する切手、各種はがきのデザインは分担しているが、干支にちなみ、毎年絵柄が変わる年賀はがきは8人がコンペ方式で全員参加する。2023年用年賀はがきの無地はがきなどに使われる5 種類は、コンペを経て4人のデザイナーが手掛けたものが採用された。
主任切手デザイナーの丸山智さんがデザインした「富士山と瑞雲」の制作秘話については別掲記事【年賀はがきができるまで 制作期間は1年以上、8人の精鋭が手掛ける「デザインの舞台裏」】(1月2日配信)に詳しいが、ここでは、2023年用年賀はがきについて、丸山さん以外の3人のデザイナーにそれぞれのデザインの意図や年賀はがきに込める思いなどを聞いた。
いわゆる切手部分である「料額」の意匠「うさぎ」をデザインした玉木明さん(切手・葉書室課長)はこう語る。
「うさぎの顔をかわいく表現しようと思い立ちましたが、全部入れると単に普通っぽいだけでした。そこで徐々に大きくしていくと、うさぎの顔が初日に見えてきて。そこから遊びが始まり、消印部分は顔と富士山を合わせました。
初日(はつひ)の光が差す小窓から、かわいいうさぎが覗いて、『おめでとう!』。そんな風に新年早々、受け取った方が感じて明るい気持ちになってくれたらいいなと思っています」(玉木さん)
制作時間については「キックオフからはしばらく頭の片隅に置いて考えていますが、手を動かし始めたら一気に短時間で作ってしまいました」と振り返る。
「制約として一番大きいのは単色で表現しなければならないこと。ですので、赤が映えること、あるいは白が映えることを意識しています。料額は“ぱっと見”の一瞬のコミュニケーションですので、その一瞬のわかりやすさを大切に考えています」(同)
料額の意匠「うさぎと梅文様」をデザインしたのは、貝淵純子さん。
「梅は他の花に先駆けて寒い中に咲きます。逆境に耐える姿は人の生き方の理想とされ、新春を表す花としても古くから愛されてきました。年賀はがきは赤インクと用紙の白地のみで表現する必要があります。新春を祝うにふさわしいおめでたさを表現すること、干支などその年を表現することも求められます。梅は紅白で違和感なくおめでたさも表現できる題材ということで選び、雪の上のうさぎの周りを飾りました」(貝淵さん)