1月公開の映画では共演女優の静かな争いが見られる。その作品は、東映70周年を記念して総製作費20億円を投じた邦画『THE LEGEND & BUTTERFLY』。木村拓哉(50)演じる織田信長と綾瀬はるか(37)演じる正室・濃姫を中心に、その周囲で絡み合う複雑な人間模様を描く歴史スペクタクルだ。
劇中で濃姫の良き理解者として彼女を支えるのが、中谷美紀(46)演じる筆頭侍女の各務野(かがみの)である。公開に先立ち、中谷は同作のメガホンを取った大友啓史監督から、「各務野は濃姫にとって憧れの存在」だと説明を受けたことを明かしている。
天下人の妻とその侍女という立場を鑑みると、一見逆にも思える関係性だが、ここにふたりの複雑な人間関係が隠されていると同作の制作関係者は語る。
「信長は天下獲りを狙う武将で、その妻である濃姫はささやかな日常のゆとりや、ありふれた幸せを享受することはできない。対して各務野は一介の侍女にすぎず、濃姫のような不自由さはない。
ここに濃姫は大きなギャップを感じていくことになります。信頼関係で結ばれたふたりの間にある“壁”が浮き彫りになっていく」
中谷は各務野と濃姫の立場の違いを「あえて際立たせる」ように演じたとも明かす。
撮影現場でも綾瀬と中谷は対照的だったと前出の制作関係者は語る。
「綾瀬さんは劇中の身分差を解消するかのように、共演者やスタッフと分け隔てなく接していました。彼女がいるだけで現場の雰囲気が和やかになるので助かりました。木村さんともドラマ『MR. BRAIN』(TBS系・2009年)をはじめ複数作で共演しているので息ピッタリでしたね。
一方で中谷さんは現場でも控えめで、必要以上にコミュニケーションを取るタイプではなかった。綾瀬さんが太陽なら、中谷さんは月といった感じ。決してノリが悪いわけではなくて、綾瀬さんとの間には良い緊張感があったように見えました」
戦国武将の陰で、女たちにも戦いがあった。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号