薬剤師といえば、誰よりも薬のことを熟知する専門家。しかし、直接患者を診察する医師とは違い、彼らが薬について多くを語ることはほとんどない。薬剤師たちは日々、薬局の窓口に立って薬を処方しながら、どんなことを考えているのか。現役で薬の調剤や販売を行う薬剤師3人が、多くの人がお世話になっている薬について本音を明かす。
【座談会に参加した現役薬剤師3人】
A子さん:大手薬局チェーンに勤める30代の薬剤師。
B夫さん:調剤薬局に勤める40代の薬剤師。
C美さん:個人薬局を経営する50代の薬剤師。
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A子:最近、新型コロナの影響なのかやたらと睡眠改善薬が売れているけれど、正直これも“私なら絶対にのまない”と思いながら販売している。
B夫:ぼくの周囲でも「あれを買うくらいなら、病院に行って睡眠薬を処方してもらった方がいい」という薬剤師がほとんどですね。
A子:市販の睡眠改善薬と病院で処方される睡眠薬は別物ですからね。睡眠改善薬に含まれているのは、鼻炎薬と同じ成分の抗ヒスタミン薬。認知機能が下がる副作用もあるし、眠れないからといって長くのみ続けるのは本当にやめた方がいい。
C美:だけど、処方薬なら安全というわけでもない。私は不眠症になっても、絶対に薬をのまないと決めています。処方される睡眠薬は「ベンゾジアゼピン系」と「非ベンゾジアゼピン系」の2種類に分けられるけれど、どちらもおすすめできない。ベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用によるふらつきやせん妄の副作用がある。転倒リスクが高いから、特に高齢者は危険。親にも絶対にのませたくない。
非ベンゾジアゼピン系は副作用も少なく依存性も低いから安全だと言う人もいるけれど、「健忘」の副作用が出ることがあります。
A子:私も、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は断固拒否したい。知人で、服用した後、夜中に車を運転してコンビニに行ってお弁当を買って食べたのに、その記憶がすべて抜け落ちていたという人もいる。
B夫:「健忘」と簡単にいいますが、恐ろしい副作用ですね……。処方薬でいえば幸いにもまだのむ必要はないけれど、降圧剤も避けたい薬の1つ。最近の降圧剤は複数の成分が配合されているものがあるので、かぜ薬と同じく不要なものをのむことになる。医師は「1錠で済むから楽ですよ」と説明するけれど、ぼくからしたら個々の病状に合わせたコントロールがしにくいうえに薬が効きすぎる可能性もあるし、副作用が出たときにどの成分の影響なのか特定しにくい。
A子:誰にとっての“楽”なのか……。生活習慣病の薬だと、私はコレステロール値を下げる薬はなるべくのまずに済ませたい。基本的に、遺伝が原因でなければ生活習慣の改善で数値を下げることは充分に可能です。
C美:とはいえ、薬をのんだ方がいい人もいますよね。うちの夫なんてコレステロール値が高いのに、“明日から、明日から”って先延ばしにして、運動も食事制限もしない。やっぱり生活習慣の改善が難しい人は、服薬で数値を下げるべきだと思う。
B夫:のまないなら、のまないなりに努力が必要ということですね。
※女性セブン2023年1月19・26日号