新しい年がスタート。心機一転、新たなジャンルの本を手に取ってみてはいかがだろう。おすすめの新刊4冊を紹介する。
『愛しい小酌 12か月のささやかなお酒と肴』/寿木けい/大和書房/1650円
お酒を飲む理由には3種類あると著者は言う。【1】季節の誘い、【2】お祝いや別れ、【3】心が渇いて寂しいとき。【2】と【3】の間の「なんでもないようなお酒」が一番。そのためのレシピ集だ。小酌とは少人数で集まって飲むこと。そんな時のもてなし料理と、独酌を彩る超速美味な一品を紹介する。塩辛の卵焼きやフライパン一つで作るポテサラなど、あ、全部常備材。今晩作ってみよっと。
『最後のひと』/松井久子/中央公論新社/1760円
逗子で独り暮らしする脚本家の唐沢燿子、75才。世田谷に住み、市民講座で哲学を教える寡男の仙崎理一郎、86才。燿子は溌剌とした知性で語る仙崎に惹かれ、仙崎もまた燿子の自由で闊達な生き方に魅せられる。これが著者の実話と知って驚く。しかし私小説の書き方ではない。人は成熟するほど純粋になっていくのだろうか。その歓びを世界に解放する。大人のメルヘンみたいだ。
『なぜ理系に女性が少ないのか』/横山広美/幻冬舎新書/1034円
15才の男女が受ける国際的な数学テストでは日本はトップクラス。が、理系に進む女子は少数。日本の指数はあらゆる分野で落ち目だが、理系女子の割合もOECD加盟国では最下位とか。モテない、就職口がない、結婚できないなどの“歪み”がはびこる社会風土。女性活躍などの標語に踊らされる必要はないが、理系頭脳なのに苔むすジェンダー観で未来を閉ざすのはもったいない。
『教場X 刑事指導官・風間公親』/長岡弘樹/小学館文庫/858円
新米刑事が捜査の勘所を叩き込まれる“風間道場”。妻を亡くした男の復讐殺人と娘のアレルギーの関係は? 身勝手な保身で殺人に手を染めた男子大学生が犯したミスとは? 失明した老教授がDVに苦しむ娘に贈った“希望の光”とは? 6話6人の風間門下生達が風間のヒントを手がかりに難事件に挑む。脇に回る風間の存在感もいいが、謎解き物としての読み応えも充分。
文/温水ゆかり
※女性セブン2023年1月19・26日号