孫の顔を見るのが楽しみという人にとって、衝撃的な研究結果がある。2003年、米ハーバード大学公衆衛生学研究教室の研究グループは、46歳から71歳までの看護師約5万4000人を4年間追跡調査した研究を発表した。その結果、孫の面倒を見る時間と心筋梗塞などの心臓病にかかるリスクに相関関係が見られ、孫の面倒を1週間に9時間以上見る人は、まったく子や孫の面倒を見ない人と比較して1.55倍リスクがあったと示した。
精神科医の和田秀樹氏はこの傾向は日本の高齢者にも当てはまるはずだと指摘する。
「普通に考えると、孫の世話で頭や体を使えば老化予防につながりそうです。しかし現在、孫がいる団塊世代は受験戦争などで激しい競争を経験したため、孫への要求水準が高い。それなのに孫の理解力が足りなかったり意欲がなかったりするとイライラが募り、心臓に負担がかかりやすくなると推察されます」
一方で長寿を招く癒しとなる“家族”がペットだ。
スウェーデンのウプサラ大学の研究者らは、約340万人のスウェーデン人を最長12年間追跡調査し、犬を飼っている人とそうでない人を比較した論文を2017年に発表した。前者は心筋梗塞や心不全、脳卒中といった循環器系疾患による死亡リスクが約23%低く、総死亡のリスクも約20%低かった。
同論文は結果について、社会的隔離や孤独などのストレスが減ったり犬と過ごすことで身体活動の時間が増えたりすることが理由として考えられるとしている。
老後を誰と過ごすかが、健康長寿を左右するのだ。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号