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力道山未亡人に衝撃を与えた「外交官志望」の女子高生は後の「大宅映子」だった【力道山未亡人~元日航CA・田中敬子の数奇な半生~#8】

敬子さんの出版記念パーティーでは猪木にビンタ(写真提供/敬子さん)

敬子さんの出版記念パーティーでは猪木にビンタしたことも(写真提供/敬子さん)

“日本プロレスの父”力道山が大相撲からプロレスに転向し、日本プロレスを立ち上げてから2023年で70年が経つ。力道山はすぐに国民的スターとなったが、1963年の殺傷事件で、39年間の太く短い生涯を終えた。しかし、力道山を取り巻く物語はこれで終わりではない──。彼には当時、結婚して1年、まだ21歳の妻・敬子がいた。元日本航空CAだった敬子はいま81歳になった。「力道山未亡人」として過ごした60年に及ぶ数奇な半生を、ノンフィクション作家の細田昌志氏が掘り起こしていく。第8話では敬子が中学生時代に出会ったあの「有名人」と意外な交友に触れる。【連載の第8回。1回から読む】 

  * * * 

8話「青少年赤十字世界大会」 

 田中敬子が力道山を初めて見たのは、中学1年生のときである。伊勢崎町の繁華街に設置された街頭テレビに映し出されたプロレス中継で動く力道山の姿を見たのだ。 

  父や弟は群衆に混じって食い入るように見ていたが、13歳の敬子はさほどの関心も抱かなかった。この時期は『鬼斬り若様』の市川雷蔵と『テネシーワルツ』の江利チエミに夢中で、新興のスポーツショーまで興味の対象にならなかった。 

  中学2年生になった頃、磯子体育館でプロレスの興行が催された。父の勝五郎が「切符が手に入った。敬子も一緒に行こう」と言った。所轄の警察署に勤務していた勝五郎のもとに剣劇や歌謡ショーのチケットが回ってくることは珍しくなく、プロレスもその一環だった。しかし「私はいい」と敬子は固辞した。映画に連れて行ってくれるなら喜んで行くが、プロレスはどうでもよかった。部活だってあるし、勉強だって忙しい。余談になるが、当時の日記にこういうものもある。 

 七月十七日(日) 

今日の夜、ママといっしょに映画に行ったわ。「修善寺物語」社会で今習っているところなのでとっても参考になったわ。 

内容はというと、源頼家の悲劇を中心としたもの。頼家には高橋貞三、かえでには岸恵子、桂には淡島千景。二人とも好演だったわ。 

いしょうもすばらしかったけど、やはりどことなく、色をつけましたという感じね。内容のすじはよかった。(原文ママ) 

  昨年で90歳を迎えた岸恵子は、同じく横浜出身でこのとき23歳。人気ラジオドラマ『君の名は』の映画版で主役の氏家真知子役を演じて、人気女優の地位を獲得していた。1957年には『力道山 男の魂』(松竹)なる作品で力道山とも共演した彼女はその後、力道山との恋仲を噂されることになるが、14歳の少女に後年の事情も含めて知る由もない。 

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