125年ぶりの1横綱1大関という異例の番付で開催されている大相撲初場所。結びの一番が終わって弓取式が行なわれると、場内放送で「規制退場にご協力ください。まず正面のお客様からご退場ください」とアナウンスが流れた。それを聞くと、観客の男性のひとりは残念そうに肩を落としていた――
2020年11月場所から始まった打ち出し後の「お楽しみ抽選会」が、今場所は行なわれていないことを知ったからだ。
「お楽しみ抽選会」とは、打ち出し後の土俵周りで、呼び出しが進行役となって若手親方が抽選箱から座席番号を引き、クジの当選者に人気力士の直筆サインやグッズがプレゼンとされるというもの。退場時の「密」を避けるために正面、向正面、西、東と順番に抽選することで“分散退場”させるためのイベントだった。登場するのが元横綱・白鵬(宮城野親方)や鶴竜親方といった引退して間もない面々であることからも人気を博していた。
冒頭の男性は「知人が抽選に当たってレアグッズをもらっていた。今場所もあるものと思って楽しみにしていたが、NHKの相撲中継では打ち出し後の様子が映らないから、国技館に来て初めて抽選会がないのだと知った」と話した。
たしかに抽選会が終了するという告知はなかった。そこで相撲協会に問い合わせたところ、「次の3月場所では完全通常開催を目指しており、そこに向けて終了することになりました。来場者が参加できる外れクジなしのガラポン抽選会は引き続き行なっています」(広報部)という説明だった。
広報部の説明にもあるように、相撲協会では通常開催に向けて準備が進んでいる。今回の初場所の定員は通常の91%にあたる9700人となり、3年ぶりに初日に満員御礼の垂れ幕が下がると、祝日の2日目、さらに平日の6日目まで札止めとなった。
「入り口では親方衆による“もぎり”も復活。黙食が条件だが、座席での飲食も可能となった。これまで1人1本だったアルコールの制限もなくなりました」
もうひとつ緩和されたのが“声出し応援”だ。
「新型コロナ感染拡大予防のためのガイドラインに基づき、飛沫感染防止のため客席からの声出し応援は禁止されていた。応援に際しては、四股名入りのタオルを掲げたり、拍手をしたりするやり方に制限されていたが、マスクを着用した状態であれば、声援を送ってもいいかたちになった」(同前)