台湾の蔡英文総統は昨年末、8月の軍事演習以降、中国の軍事的な強硬姿勢はますます明確になっているなどとして、18歳以上の男子に義務づけている兵役の期間を現在の4か月から1年に延長すると発表した。この裏には、台湾を支援する米国政府の圧力があったとの見方が浮上している。英BBCが報じた。
蔡氏は発表のなかで、台湾の現在の防衛体制は世界最大級の軍事力を持つ中国からの武力侵攻に耐えられるものではないと指摘し、米軍からの軍事支援が重要だと述べた。そのうえで、「これはとても厳しい決断だが、総統として、軍のトップとして、国益を守り、私たちの民主的な生き方を守ることが、私の不可避の責務だ」とも述べ、台湾人自身が防衛の最前線に立つことの重要性を強調し、新たな兵役期間は2024年1月から施行されることを明らかにした。
これについて、BBCは「総統の決断の裏には米側の圧力があったのではないか」と報じている。
台湾では1990年代初めまでは、18歳以上の男子全員が最長3年間の兵役を義務付けられていたが、1年10か月に期間が短縮された後、さらに現在の4か月となった。米軍と台湾軍の非公式協議で、台湾軍の兵役期間が4カ月と短いことが議題に上ったことがあったという。
また、ナンシー・ペロシ米下院議長が昨年8月に台湾を電撃訪問した際にも、「米国は台湾を支援するが、台湾側も最大限の努力をしなければならない」などとくぎを刺したといわれている。
昨年10月の中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)の冒頭で、中国の習近平・国家主席が台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢を示していたが、この翌日にはブリンケン米国務長官が、中国が以前の予想より「はるかに速いスケジュールで」台湾の統一を目指していると述べている。この発言もまた、蔡氏が兵役期間を1年に延長することを決めた大きな要素になったと見られている。
来年1月には総統選挙を控える中、蔡氏にとっては苦渋の決断といえよう。