オーストラリア政府が昨年末、中国人民軍に訓練を行っていた元米軍パイロットのダニエル・ダガン被告の米国への身柄引き渡しを承認していたことが明らかになった。ダカン被告は、2011年から2012年にかけて中国軍から報酬を受け取っていた。ダガン被告は米国政府からの追及を恐れて、2012年にオーストラリアに帰化していた。
ダガン被告は、中国人民解放軍の空軍パイロットに対し、航空母艦への離着艦訓練を指導したほか、中国軍の関連企業に米軍の軍事機密を提供するなどして10万ドル(約1300万円)以上の報酬を得ていた。
中国軍は欧米諸国やオーストラリアなどの空軍パイロットを雇い、買収して軍事機密を提供させていると報じられていたが、米軍の元パイロットが中国空軍の訓練の指導に関与していたことが分かったのは初めて。米紙「ワシントンポスト」などが報じた。
豪政府によると、ダガン被告は南アフリカのパイロット養成学校「テストフライングアカデミー・オブ・サウスアフリカ(TFASA)」を介して、中国軍の訓練指導に参加していた。英政府は昨年「TFASAは中国政府が欧米諸国の引退した軍パイロットを引き抜く仲介役を担っている」と警告していた。
ダガン被告が指導した訓練には軍のパイロット訓練生の評価や海軍航空関連機器のテスト、空母離着艦に関連する戦術、技術、手順の指導が含まれていたという。
このほかにも、ダガン被告は武器輸出管理法および国際武器取引規制違反など4件の罪状に問われている。
米司法省は昨年、中国政府から数万ドルの報酬を受け取り、中国に米国の防衛関連情報を提供したとして元米軍パイロットを起訴しているが、中国軍の軍事訓練の現場で中国軍パイロットに指導を行っていたことが明らかになったのはダガン被告が初めてだという。