応募総数120作品から選出された4作品を俎上に、第29回「小学館ノンフィクション大賞」最終選考会が先月、行なわれた。政治記者が見つめ続けた政権交代の舞台裏、人間爆弾の発案者で戦後存在を消された男の真実、狩猟を通じて命との向き合い方を学んだ狩人の記録……それらを抑えて大賞に選ばれたのはレディース雑誌編集長による少女たちの裏面史だった。受賞作は今春刊行予定。
【受賞作品のあらすじ】
『特攻服を着た少女と1825日』比嘉健二(編集者/66歳)
13歳で地元のレディースに入ってから1年もたたずに総長として君臨するも、仲間からのリンチに遭い、チームを破門された少女・すえこ。
親友の死を乗り越え、歴史・規模ともに日本一のレディース『三河遠州女番長連合』初代総長として地元のヤクザと渡り合い、事務所まで構えて君臨し続けた女帝・のぶこ。
レディースに所属しながら執筆や音楽など多方面で才能を発揮し、現在ではかつての自分や仲間と同じように生きづらさを抱える少女たちを支援するじゅんこ。
バブルの狂乱の一方、1980年代後半~1990年代前半は日本全国で彼女たちのような女性暴走族、いわゆる“レディース”が、特攻服をなびかせていた時代だった。
その姿に惹きつけられた筆者は、レディースを主役にした雑誌『ティーンズロード』を創刊する。
特攻服を着た血気盛んな少女が一堂に会する一触即発の撮影現場や、チームをまとめ上げるレディース総長たちの苦悩、シンナー中毒をめぐる誌面討論、いじめや摂食障害など切実な悩みが綴られた読者投稿。
『ティーンズロード』は期せずして学校や社会からはみ出した少女たちにとっての居場所になった。
チーム内の上下関係は厳しく、時には鉄拳制裁も辞さない。常に警察に追われ、学校や親からも糺弾され、少年院に入るのも稀ではない。にもかかわらずなぜ彼女たちはケンカや抗争に明け暮れる青春を選び、どんな大人になったのか。
出版史からもカルチャー史からも埋もれ、語られてこなかったレディースの世界を、筆者が彼女たちと過ごした1825日の記憶とともに紐解いていく。