ライフ

「はやり目」「アポロ病」 特効薬も予防ワクチンもないウイルス性結膜炎

ウイルス感染によるつらい結膜炎(イラスト/斉藤ヨーコ)

ウイルス感染によるつらい結膜炎(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、特効薬のない目の感染症についてお届けする。

 * * *
 今回はウイルス感染によるつらい結膜炎を2つご説明します。

 結膜はまぶたの裏と表面を覆っている半透明の膜です。結膜は直接外界と接しているために、いろいろな病原体の感染を起こしやすい組織です。

 この結膜にウイルスが感染して起こるのがウイルス性結膜炎で、そのひとつに「はやり目」と別名のある流行性角結膜炎があります。流行り目と言うだけあって、感染力が非常に強く、すべての年齢層に感染します。職場、学校、病院などでの集団感染のほか、家庭内での感染も起こりやすい目の病気です。

 アデノウイルス(8型、19型、37型、54型など)の感染で起こり、潜伏期は2~14日(約1週間)。急にまぶたが腫れて、涙が流れます。最初は片方の目だけの症状であっても、数日内にもう一方の目にも感染してしまうことが多いです。目やに、涙目、結膜の充血等が起こり、ひどい場合には角膜(黒目)に炎症が及び、小さな濁りが残ることがあります。細菌を合併して感染すると視力の低下を残すこともありますから、眼科専門医を受診することが必要です。

 そしてもう一つ、エンテロウイルス(70型)やコクサッキーウイルス(A24型)などの感染で起こる急性出血性結膜炎があります。別名「アポロ病」と呼ばれ、アポロ11号が月面着陸を成し遂げた年にこの急性出血性結膜炎が大流行したので、「月から持ち帰った病原体が原因だ!」と噂が立ったことに由来します(真っ赤な嘘です)。

 潜伏期は1~3日で、突然の目の痛みとゴロゴロとした違和感、充血、結膜下出血等が現われます。結膜下出血を起こすのが、急性出血性結膜炎の特徴になります。さらにまぶたの腫れ、目やに、角膜表面の混濁なども見られます。稀ではありますが、合併症として運動麻痺があります。こちらも、速やかな眼科の受診が必要です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン