「日本人は牛乳に弱く、お米に強い」。食べ物と遺伝子の相関関係をひもといた第1弾に引き続き、今回は運動や生活習慣について紹介する。長年、日本人の「遺伝子」と「体質」を研究してきた予防医学の第一人者である内科医・奥田昌子さんが解説する。【短期集中連載第2回。第1回を読む】
* * *
世界の人々は長い年月の間に遺伝子を少しずつ変化させ、暮らす地域の生活習慣、気候風土に適応しながら、それぞれ異なる体質を身につけました。日本人は、欧米人とくらべて動脈硬化になりにくい、骨が強い、腸内環境がきれいなどの強みを持つ一方、内臓脂肪がつきやすいという弱点があります。
内臓脂肪は皮下脂肪とくらべて危険度が高く、悪性物質を作るため、増えれば増えるほど高血圧や糖尿病、脳梗塞などの生活習慣病、そして、がんの発症率を高めます。日本人は一般的に欧米人ほど太っていませんが、お腹にたまった内臓脂肪が病気を引き寄せるのです。これは遺伝子で決まっていて、日本人だけでなくアジア人に広く見られます。
それにしても、病気につながる不利な体質をアジア人が受け継いできたのはなぜでしょうか。ここには意外な理由が隠れています。
四足歩行の動物と違い、人間は生活時間のほとんどを立った状態で過ごすため、そのままだと内臓が重力でずり落ちて、適切に機能できなくなります。そんなことにならないように発達したのが、お腹の両側にある腹斜筋と腹横筋です。この2つの筋肉は、コルセットのように内臓を外から支えています。
ところが、筋肉の強さには人種差があります。アフリカ人や欧米人は腹斜筋と腹横筋が強くなるタイプの遺伝子を持っているのですが、日本人を含むアジア人は遺伝子が異なるため、筋力が弱く、内臓を充分に支えることができません。その弱点を補うために、アジア人は内臓と内臓の間に脂肪をため込むようになり、内臓脂肪をクッションにして内臓を正しい位置に固定するようになった可能性があります。内臓脂肪も少量であれば、大切な役割を果たすのです。
余分な内臓脂肪を落とすためには、まず肉や牛乳、洋菓子など、脂質の多い食品を控えてください。そして欠かせないのが運動です。