中国人民解放軍は近年、高性能兵器の開発を大きく前進させたものの、軍内ではこれらのハイテク兵器を操作する人材の育成が追いついていないという。そのため、多くの高性能兵器の持てる威力を発揮できず、兵器が兵士の能力が向上するのを待つ奇妙な現象が起こっている。これは中国人民解放軍機関紙「解放軍報」が報じたもので、同紙が軍の問題点について、率直に論評するのは極めて異例といえる。
同紙は、中国軍北部戦区海軍のフリゲート艦の副艦長が新鋭艦の設備や軍備に対応できず、艦長に昇進するための実務試験に数年間、合格できなかった状況をルポルタージュ風に描写。中国海軍の人材育成が急速な装備の近代化に追いついていないというジレンマが垣間見える報告となっており、
「中国の国力上昇に伴い、中国人民解放軍も近年『富国強兵』を掲げ、全面的な軍備の近代化を急いでいるが、艦船の軍備の性能が年々進歩しているためそれに対応した人材育成が遅れがちで、高度人材の養成が急務となっている」
と報じている。自動化やIT化が進んだ新しい艦船を扱うには、多くの乗組員が初歩的なレベルから訓練を受け直さなければならない状況だというのだ。
このような現状についてはすでに指導部でも危機感が深まっており、中国人民解放軍の最高指導者である習近平・中央軍事委員会主席(国家主席兼党総書記)は、 昨年10月の第20回中国共産党大会での政治報告の中で、「中国軍は世界最高水準の戦闘力を構築する必要がある」と述べたうえで、軍の高度人材の育成の必要性を改めて表明している。