日本は「治安のいい国」ではなかったのか──。頻発する凶悪な強盗事件は、ついに犠牲者まで出した。卑劣な犯罪グループが抱える闇の深さは底知れず、いまこの瞬間にも、なんの罪もない一般市民が被害者になろうとしている。
関東近郊で凶悪な強盗事件が連続して発生している。東京狛江市で1月19日、90才の女性が自宅で襲われて命を落としたほか、千葉、茨城、埼玉、栃木、神奈川などで、複数名の実行犯による強盗、窃盗事件が相次いで発生。広範囲での犯行を手引する「犯罪グループ」の存在が浮かび上がっている。
昨年12月16日に、東京・渋谷の貴金属店に侵入してネックレスや指輪など約272万円相当を盗んだ容疑で逮捕された19才の少年3人のうち1人は「金に困ってインスタグラムの闇バイトに応募した」と証言している。SNSで実行犯が集められているのだ。インターネット犯罪に詳しいITジャーナリストの三上洋氏が解説する。
「高収入を謳って、SNS上で“闇バイト”“裏バイト”の募集が行われています。以前はツイッターが盛んでしたが、取り締まりが厳しくなっているうえ、ユーザーもインスタグラムに移っていっているので、インスタグラムでの募集が増えている印象です」
元警視庁組織犯罪対策部の櫻井裕一氏が続ける。
「振り込め詐欺などの特殊詐欺の犯人像と構図が同じです。つまり、『元締め』である犯罪組織がSNSなどを駆使して『実行犯』である受け子・出し子を集めて、犯罪を実行する形態です。
今回の強盗団も、強盗を計画する指示役と、実際に強盗をする実行役が分かれているので、実行役たちはお互いに面識がないどころか、指示役の素性も知らないことが多い。そうなると、事件の全容を解明して、首謀者まで捜査が辿り着くことが難しくなる」
実際、SNSで「闇バイト」「裏バイト」と検索すると、大量の書き込みがヒットする。そういったアカウントにダイレクトメッセージを送ると、秘匿性の高いアプリでのやりとりに誘導されるという。今回の一連の強盗事件でも『テレグラム』というアプリが使われている。
「『テレグラム』は、もともとは利用者同士のやりとりをアプリのサーバー側に残さないので、プライバシーが保護できることを売りにしていました。一定時間が経つと送ったメッセージが自動で消去される機能などもあります。しかし結果として“証拠を残したくない”という犯罪者には好都合だった。闇バイトのやりとり以外にも、薬物の売買などに使われているとされています」(前出・三上氏)